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参議院予算委員会公聴会(5/2)森ゆうこ質疑「会議録」

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平成25年5月2日15:00~15:15
外交・安全保障
【公述人】
元外務省国際情報局長 孫崎 享
キャノングローバル戦略研究所研究主幹・立命館大学客員教授 宮家邦彦
ジャーナリスト 宮坂 聰
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○委員長(石井一君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。
 平成二十五年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。
 午後は、元外務省国際情報局長孫崎享君、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・立命館大学客員教授宮家邦彦君及びジャーナリスト富坂聰君に公述人として御出席をいただいております。
 この際、公述人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。
 本日は、平成二十五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、会議の進め方について申し上げます。
 まず、お一人十五分程度で着席のまま御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
【公述人三名のご意見は森ゆうこ質疑の最終に掲載】
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○森ゆうこ君 生活の党の森ゆうこでございます。
 今日は三人の公述人の先生方、大変有意義なお話、ありがとうございました。それぞれの先生方の御主張、いろいろと立場は違い、また視点も違うんですけれども、大変興味深く聞き入っておりました。
 まず、孫崎公述人に質問をさせていただきたいと思います。
 先般、主権回復の日ということで式典が開催をされました。非常にこれシンプルな疑問なんですけれども、いわゆる保守論客と言われる人たち、それから、特に安倍政権、安倍総理を始め日本の独立だ自立だとこう声高に言う方たちは、なぜか、これは印象としてなんですけれども、米国に対しては、特にこの間の日米首脳会談もここまでお土産を持っていくのかとか、余り戦略的に我が国の国益をできるだけ確保するような主張をされていないのではないかというふうに、なぜか保守であるというふうに自らおっしゃっている方に限って対米追従ではないかというふうな印象を持つような言動というふうに思うんですけれども、なぜそういうふうになるのか、そうでないというならそうではないというふうにおっしゃっていただきたいと思いますし、なぜそのようなことになるのかということについて、先生、もし御見解があればお聞かせいただきたいと思います。
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○公述人(孫崎享君) 主権回復の日、これは二つのものがありました。一つはサンフランシスコ条約で日本が独立するということ、もう一つは日米安保条約です。そして、日米安保条約とともに地位協定があった。
 この日米安保条約をつくるときにダレスがどのようなことを言ったのか、アメリカの交渉。我々が望むだけの軍隊を望む場所に望む期間だけ持つ。これが今日まで続いているんですよね。ですから、世界を見渡していただければ、外国の軍隊が自分たちの思うような条件でい続ける、こんな国はほとんどないですよ。ということで、政治家、役人も含め、日本の国に対して奉仕する者、それは少なくとも、外国の軍隊が不必要に、そして一方的な条件でいるという状況は少なくとも直していかなきゃいけない、これが主権回復の日の欠けている論点だったと思っています。
○森ゆうこ君 ありがとうございます。
 今の御指摘、私も共感をさせていただきたいと思います。我が国がどのように自らの主権を守っていくのか、どう考えていくのかということについて、まずは虚心坦懐に米国と話をするというところからスタートしなければならないのかなというふうに思っているところです。
 ところで、宮家公述人に伺いたいんですけれども、そういう意味でいいますと、先ほど孫崎公述人から御指摘のありましたイラク戦争についての検証ということについては、まだきちんと我が国においてはなされていないというふうに、私もそのように理解をしております。米国、そして英国においても検証がなされているというふうに私は認識しているところですけれども、宮家公述人は中東についてもお詳しいということもありますけれども、あのイラク戦争についてはどのように評価をされていらっしゃるでしょうか。
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○公述人(宮家邦彦君) 中東アフリカ局長になったような気分でありますが、私は、八二年から二年間バグダッドに、アラビア語研修が終わった後の最初の勤務がバグダッドでした。申し訳ないけれども、非常に厳しい独裁政権、多くの人が理不尽に殺されていきました。これがイラクの実態であったと思います。
 それが八二年でありますが、それから二十年全く変わらない。そして、累次の国連安保理決議というものを全て無視をし、そして十分な検証を受け入れなかった、これによって国連安保理決議に基づいて武力行使が行われたと考えております。
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○森ゆうこ君 しかし、ここで宮家公述人と論争するつもりはございませんけれども、大量破壊兵器というものはなかったわけでございまして、その大前提のところが崩れているという指摘もございます。
 公述人とここは論争する場でもございませんので次の質問に移りたいと思うんですけれども、富坂公述人に北朝鮮問題について伺いたいと思います。
 事前にいただいた資料にも書いてありましたけれども、北朝鮮が国際的に孤立をしているかというと、そうではないという記述がございました。私もそれは実感をいたしております。新潟県選出でございまして、北朝鮮拉致問題にかかわる中で、国際的な世論を高めようということで、各国と協調して、各国の議員と連携してというような活動も行いましたけれども、非常に北朝鮮というのはしたたかで、特に金正日のときには非常にしたたかで、今何か国なんでしょうか、百三十か国以上の国と国交があり、しかも、政党の代表として、海外からおいでになる国の、東南アジア諸国の代表あるいは各国の議員の皆さんとお話をするときに、北朝鮮の拉致問題の解決に是非協力をしてくださいという話をしますと、それまでとは態度が一変して北朝鮮の肩を持つような発言をされる国が大変多かったということで、その現実というものを私たちは見なければならないというふうに思っております。
 今の、政権が替わったわけですけれども、ジャーナリストという立場でいろんな情報をまたつかんでいらっしゃるかと思いますけれども、この北朝鮮問題についてもう少し御解説をいただければと思います。
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○公述人(富坂聰君) 御指摘のとおりだと思います。
 実際に、核実験を最初に、核疑惑が出て以降も外交関係を結ぶ国が増えているわけですね。ですけど、日本から見ていると、孤立して明日にでも崩壊するという報道一辺倒ですね。だから、これはある種、ちょっと願望が記事になっちゃっているようなところがありまして、正確ではないと思います。
 実際に、北朝鮮をめぐる動きというのは、北朝鮮も非常に準備がよくできていて、例えば原油の問題にしても銀行の問題にしても、これは制裁されることを前提で挑発に出ていると思いますので、それを止めたところで即座に効果があるということは私は期待できないと思います。
 その一方で、日本が北朝鮮をめぐる外交の中で世界各国とすごく私はずれているなと思うところが一点あるんですけれども、それは、一つ、北朝鮮をめぐるテーブルに着いたときに、日本は割と真面目に北朝鮮から核兵器を取り上げるとかそういったことを考える。これ一生懸命そこに向かっていくんですけれども、ただ各国、一緒にテーブルを囲んでいる人たちが考えていることは、一つの、北朝鮮から核をなくすと、朝鮮半島の非核化というゲームの中で、それが終わったときに自分がいかに有利なポジションを他の関係した国の中で得るかというもう一つの価値観を持って臨んでいるということですね。ですから、もう少し複雑なゲームを日本以外の国は戦っているということがあります。
 そういう中で特に際立っているのが中国で、中国は、六か国協議重要だと言いますけれども、ただ現実には、やっぱりこれは二国間で北朝鮮と向き合っていこうということはもう明らかだと思います。ですから、二〇〇八年ぐらいからもう急速に北朝鮮との距離を縮める外交に転じています。二〇〇九年には中朝友好年というのを定めまして、往来を加速した。
 しかし、ここのところに来て、やはり国民の突き上げもあって、北朝鮮に対して、実際には自分たちが余り影響力ないということもだんだんと世界も分かってきたということも分かりつつあるので少しずつ態度を変えていますけれども、ただ、今のところ北朝鮮を取り囲む状況というのは決め手を持っている国は一つもないし、決め手を持っている状況もないというふうに私は見ています。
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○森ゆうこ君 北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも同胞がまだ拉致された状態なわけですから、この拉致問題を解決するためには、大変迂遠なようですけれども、やはり国際協調、国際世論を高めていく、日本に協力してくれる国、一生懸命協力してくれる国を増やしていくということに力を注ぐべきだというふうに思っております。そういう意味で、日本は国際社会に対する宣伝がやはり相変わらず下手であると。
 一方で、今回、やっぱり口実を与えてはいけないわけですよね、ファシストの復活であるという口実。そういう宣伝の材料を与えてはいけないわけでして、日本はこんなに平和で、平和を愛し、協調的な、そして自然とも共生の理念を持っている、そういう国民性は日本人以外にはないというふうに我々は思っているわけですけれども、上手に宣伝し、対外的にそういうことを発信しなければ理解してもらえないわけで、私も非常に家庭的で優しいと自分では思っているんですけれども、これは宣伝しなければ誰にも分かってもらえないわけですから、そういう意味で、このファシストの復活と、日本の右傾化という誤ったマイナスのメッセージがこれ以上拡散しないようにというふうに思いますので、富坂公述人のおっしゃった意見には非常に私は同感できます。
 そういう意味で、日本としてもっとここを宣伝していくべきであるというふうにアドバイスがあればいただきたいのと、あわせて、宮家公述人には、先ほどのお話ですと安倍内閣のブレーンということですので、是非今のような視点で安倍内閣に対してサジェスチョンをされてはいかがかというふうに思いますので、その点について何か御意見があれば是非お願いします。
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○公述人(富坂聰君) 御指摘ありがとうございます。森先生が非常に優しい方ということは私もよく存じ上げておりますので、宣伝上手じゃないかなと思います。日本も是非先生に倣っていただけたらと思いますが。
 本当にそういう意味でいいますと、やはり日本というところは内向きなところが時々ありまして、それをそのまま海外に出してしまうと非常に誤解されるということがあって、特に私らの世代ですけれども、六十年間平和を通したということはこれは十分に世界に対して通用する価値観だと思うんです。ひょっとすると、その六十年間をわざわざ否定して、世界が持っている最も先鋭的な部分の最後尾に付く必要はないかなと私は思います。
 むしろ、何といいますか、私らの世代の持っている一つの特徴として、軍備を拡張することに対して制限を加えられたので、逆にそれに対してオールマイティーな考え方をし過ぎるというのがありまして、ただ実際に非常に武力だけで他国を言うことを聞かせるとか、そういうことというのは個人のベースでもなかなか難しいことであると思うんですよね。
 ですから、そういう意味で、その価値観の有用性というのは実際どうなのかなというのはやっぱりきちっと考えていって、むしろ日本として、森先生がおっしゃられたような価値観を一つの形にして、分かりやすい一言で世界にアピールできるような宣伝戦を仕掛けていけたらより効果的かなというふうに考えます。
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○公述人(宮家邦彦君) 私が誰かのブレーンだとかなんとかおっしゃる方がおられましたけれども、確かに七年前に私が公邸連絡調整官であったことは事実であります。しかし、今は全く違います。私は独立した一研究者であり、それ以上でもそれ以下でもありません。もし私が本当にブレーンであれば、この場所にはいません。その誤解のないようにしていただきたいと思います。
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○森ゆうこ君 失礼しました。
 孫崎公述人、最後にTPP……(発言する者あり)済みません、一言で結構でございますけれども、TPPその他、我が国の進むべき外交、一言でというのは大変ですけれども、これだけはというのが一言ありましたら、よろしくお願いいたします。
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○公述人(孫崎享君) TPPを含め実態をしっかり見極める、これが一番重要なことだと思っています。
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○森ゆうこ君 ありがとうございました。
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○委員長(石井一君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。
 平成二十五年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。
 それでは、外交・安全保障について、まず孫崎公述人にお願いいたします。孫崎公述人。
○公述人(孫崎享君) 孫崎享です。よろしくお願いいたします。
 本日、お招きいただきまして、大変に光栄に存じております。
 まず最初に、TPPの問題に言及いたしたいと思っております。
 TPPは、日本の将来を決める大きな岐路です。今日の外交問題で最も重要な課題であると言えます。TPPには様々な問題がありますが、ISD条項は国家の主権を揺るがす重大課題です。
 これまでの経済交渉は国家対国家でした。ISD条項によって企業が国家を直接訴える。米国では弁護の優劣がしばしば判決を左右しますが、ISD条項にかかわる裁判では、企業は巨額の資金を投入いたします。裁判の基本理念は経済活動で、受入れ国の法律や制度で期待される利益が得られなかったときに訴えることができるものです。健康、土地活用、政府調達、知的財産権、規制、税等広範な分野が対象になると見られております。
 皆様に質問いたします。次のケースをどのように考えるか。
 政府が企業に廃棄物処理施設許可を与えたが、有毒物資による近隣の村の飲料水汚染等でがん患者が多数発生する等のとき、危険が提訴され、地方公共団体が施設利用の不許可処分にした。有害毒性の指摘があり、添加物を持つガソリンの輸入を禁止した。製品には副作用があり、その調査を十分しなければならないが、新薬の特許申請に対して臨床実験が十分でないと許可を与えなかった。私は、和歌山県の講演でこのことを提起し、皆、それは当然であろうとの反応でした。
 では、TPPになるとどうなるのか。NAFTAの例で見てみたいと思います。
 メタルクラッド社がメキシコ連邦政府から廃棄物処理施設の許可を受けて投資、有害物資による近隣の村の飲料水汚染等でがん患者が多数発生されたとされ、地方公共団体が施設設立の不許可処分をした。これに対して企業は提訴し、約一千七百万ドルの賠償の判決が出ました。
 カナダ政府が人体有害毒性の指摘があるガソリン添加物MMTの輸出を禁止すると、同製品生産会社である米エチル社は確実な証拠もなくこれを規制しているという主張をし、結局、カナダ政府は千三百万ドルを支払い、和解をいたしました。
 カナダ政府は米国製薬会社イーライリリー社の注意欠陥多重性障害治療剤の臨床実験数が不十分であるとして許可を与えず、会社はこれをカナダの最高裁判所に持ち込んだが、カナダの最高裁判所はこれを却下。今度は、イーライリリー社はISD条項でカナダ政府を訴え、その額は約一億ドルです。
 憲法は国会の最高規範となっておりますけれども、ISD条項はこの法律を裁くのです。日本では最高裁の判決が最上位です。ISD条項はこの判決を裁くのです。
 次に、尖閣問題について言及いたしたいと思います。
 日本にとって、棚上げが最も望ましい方向であると思います。日中双方が主権を主張している中、日本の管轄を認める、軍事力を行使しないとの暗黙の了解、そして、管轄継続であれば、領有権主張に将来有利に展開いたします。この中、最も重要な点は、紛争を回避することにあります。
 中国は領有権主張を強めていますが、紛争解決策としての棚上げは以前主張しております。一九七九年の読売新聞社説は次を述べています。
 日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた。それは共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府のれっきとした約束ごとであることは間違いない。約束した以上は、これを順守するのが筋道である。
 今日、日本政府の立場は棚上げの合意はないという見解である。しかし、栗山元外務次官は昨年、アジア時報に次を記述いたしました。
 筆者(栗山)はこのような経緯を踏まえると、国交正常化の際に際し日中間において、尖閣問題は棚上げにするとの暗黙の了解が首脳レベルで成立したと理解している。七八年の経緯に触れた後、七二年の国交正常化のときの尖閣問題棚上げの暗黙の了解は一九七八年の平和友好条約に際して再確認されたと考えるべきであろう。
 ちなみに、栗山元次官は日中国交回復のとき条約課長の任に当たっております。
 次に、尖閣諸島で武力衝突で日本側が有利に展開することはない。中国は、従来より台湾を正面に据え軍隊を配備してきた。ここでの戦闘機の配備を見れば、尖閣諸島周辺の制空権は中国が握ると考えられる。中国は短距離、中距離弾道ミサイルを配備し、更にクルーズミサイルを有している。戦闘になれば、飛行場の滑走路破壊ぐらいは容易であり、軍事的に日本が優位に立てることはないと考えるべきである。在日米軍基地も同じ危険の中にある。
 この中、日本が取るべき道は平和的手段を模索することである。第一に、相手の主張を知り、自分の言い分との間で各々がどれだけ客観的に言い分があるかを理解し、不要な摩擦は避ける。今日、日本人で中国がいかなる法的根拠で尖閣諸島を主張しているかを知っている人はほとんどいない。第二に、領土紛争を避けるための具体的な取決めを行う。第三に、国際司法裁判所に提訴するなど解決に第三者をできるだけ介入させる。第四に、緊密な多角的相互依存関係を構築する。第五に、国連の原則、武力の不行使を全面に出していく。第六に、日中間で軍事力を使わないことを共通の原則とする。主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵。第七に、現在の世代で解決できないものは実質的に棚上げし、対立を避けることである。あわせて、棚上げ期間は双方がこの問題の解決のために武力を利用しないことを約束する。第八に、係争地の周辺で紛争を招きやすい事業につき、紛争を未然に防ぐメカニズムをつくる。漁業、資源開発。
 次に、集団的自衛権の問題。
 集団的自衛権は、柳井元駐米大使を座長とする有識者会議の事例を中心になろうと。重要なポイントは、日本で討議されている集団的自衛権は、国連の集団的自衛権を想起させるが、これは国連の理念と対立する理念である。
 国連の理念は次を基軸としている。第二条第四項、全ての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。第五十一条、この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力行使が発生した場合には、個別的又は集団的自衛権の権利を害するものではない。つまり、各国は武力行使を慎む、万一武力行使をされたら集団的自衛権が発生するというものである。
 しかし、今日、米国が行っている戦略は国際的安全保障環境の改善のためという名目であって、このとき相手国の攻撃が実在することを必ずしも必須とはしていないということです。実は、この戦略は一九四八年のウェストファリア条約から今日の国連憲章につながる西側の思想の対極にあるものである。この戦略に従って、日本の軍事的参加を求める集団的自衛権の行動が付随的に出てくる。あくまでも、攻撃は米国及びその同盟国側がスタートすることを前提としている。
 こうした戦略がいかに間違ったものであるかは、イラク戦争、アフガニスタン戦争が明確に示している。かつ、イラク戦争では各国がその是非につき公的機関で検証を行っているが、日本は、国会を含め十分な検証を行うことなく、同じ過ちを犯す集団的自衛権に突入しようとしているのは極めて遺憾な現象であると見られます。少なくとも、集団的自衛権の推進者は、イラク戦争につき、なぜ間違ったか明確な答えを示すべきであります。
 この関係で北朝鮮に言及しておきたい。
 北朝鮮は、日本向けとなり得るノドンを二百発から三百発実戦配備していると言われる。国民を守るという意味で、ミサイル防衛の実効性は全くない。
 北朝鮮については、かつてキッシンジャーが述べた外交を展開すべきである。イ、核保有国の戦争は、中小国家であっても核兵器の使用につながる。ロ、核兵器を有する国は、それを用いずして全面降伏を受け入れることはないであろう。一方で、その生存が直接脅かされていると信ずるとき以外は戦争の危険を冒す国もないと見られる。無条件降伏を求めないことを明らかにし、どんな紛争でも国家の生存の問題を含まない枠をつくることが米国外交の仕事である。
 今日の日本外交を見るに、中国、韓国、北朝鮮の立場に配慮をすることなくいたずらに強硬論をぶつ傾向があるのは大変危険である。欧州であれ東南アジアであれ、武力を使わず平和的解決を行うメカニズムを構築している相互依存を高めることが武力衝突を避ける最善の策である。
 御清聴どうもありがとうございました。
○委員長(石井一君) ありがとうございました。
 次に、宮家公述人にお願いいたします。宮家公述人。
○公述人(宮家邦彦君) 委員長ありがとうございます。宮家邦彦でございます。
 私、二十七年外務省におりまして、一度もこちらで座ったことがありませんが、今回はその機会をいただいたことを大変光栄に思っております。
 先ほどは、TPPから始まって個々の問題についてお話がありましたので、私はもう少し幅広い戦略的な発想、私が個人的にどう思っているかをお話ししたいと思います。一応ペーパーを作りましたけれども、必ずしもこれに沿うかどうか分かりません。
 昨日、韓国から帰ってまいりました。韓国でシンポジウムがありまして、中国、アメリカ、韓国、台湾、それからヨーロッパ、関係者がいろいろ、学者等が集まりましたけれども、非常に状況が変わったなということを強く思いました。
 まず、東アジアの現状でありますが、ここに書いたとおりでございます。相互依存の環境の下ではありますけれども、西太平洋の海洋覇権について米中間で対立が始まったと私は思ってここに書きました。恐らく五年前であればこういう書き方はしなかったと思います。しかし、この五年間の間に大きな変化があったなと思いました。そのポイントを五つここに書きました。
 まず一つは、中国の台頭でございます。中国の台頭が平和的である限り、これはもう大歓迎でございます。是非そうしてほしいと思います。ただ、それが始まってもう何年もたちますけれども、どうやら力を背景として、すぐにではないかもしれませんけれども、段階的に現状を変更しようとしているのではないかという懸念、これはあくまでも仮説です、仮説ですが、そういう懸念が増えているというのを私も思っておりましたが、実際に昨日ソウルでも同じようなことを言う人が多かったです。そこで、やっぱりそうなんだなということを強く思いました。
 そして第二に、もっと大事なことですが、中国の圧力増大というものを抑止しようとする関係国が、いろいろ動きが出てきております。それを、あるアメリカの学者はリバランスと呼んでおります。リバランスというのは、アメリカだけじゃなくて、周辺諸国も中国の圧力に対応する形でバランスを取るような形の動きをしているというのが現実だと思っております。いいか悪いかは別としてです。
 そして第三に、昨日も特に思ったことですが、東アジア諸国でのナショナリズム、民族主義の高まり、そしてそれが相互に影響し合う応酬になっていると、こういう指摘もありました。私は、民族主義というよりも、ペイトリオティズムと言いますが、英語では、愛国主義という言葉であればみんなアメリカの人も含めていいけれども、どうもナショナリズム、偏狭なナショナリズムが台頭しているようで、非常に気になるということを言っておりました。これも私、強く感じたことでございます。
 それから四番目でありますが、北朝鮮の議論ももちろんいたしました。北朝鮮は、この状況、すなわち米中がこれからどのような形で協力をしていくのか、対立をしていくのか分かりませんけれども、そのはざまの中で生き残りを図っている。そして、中国は北朝鮮を見放すことはないだろうと足下を見ているし、それからアメリカと韓国も絶対戦争なんかできないだろうと足下を見ている。ここで生き残りを図っているんだろうなあと。まあ三代目のボンボンでありますからどうなるか分かりませんけれども、もし彼らが引き継いだ会社が小さなファミリービジネスであればいいんですけれども、それを理解しないで、もしかして大会社を引き継いだと勘違いをすると大きな誤算が生ずる可能性があるということでございます。
 それからもう一つ御指摘申し上げたいのは、ASEAN、インドの問題であります。
 確かに、フィリピン、ベトナム等は中国との関係で非常に自己主張を強めている部分がありますけれども、必ずしも全ての国がそういうわけではありません。むしろ、その間で自己主張をするよりも利益の最大化を図っていると、こういう印象を私は今、東アジアについて持っているわけでございます。
 そこで、五分たちましたので、今度は中東の話をちょっといたします。
 私もアラビア語が専門だったものですから、中東地域のことを若干理解しているつもりであります。ちなみに、私は一九七二年、日中の国交正常化のときにちょうど大学に入りましたので、中国語を第二外国語として勉強し、日中友好青年でありました。その人間がいつの間にかアラビア語になってしまったのですが。
 中東では実は何が起きているかというと、やはり一番大きな、戦略的に地政学的に大きな問題は米軍の撤退だと思っています。米軍がイラクからもう既に撤退をいたしました。そして、二〇一四年の末までにはアフガニスタンから撤退をいたします。
 ここで何が起きるかというと、もちろんそれがいいか悪いかは別として、常に力の空白が生まれるわけでございます。その力の空白、例えばイランのシャーが倒れたとき、イランがシャーが倒れて、それからイラン・イラク戦争が始まりました。それから、アフガニスタンで内戦が始まりました。そして、そこでアフガニスタンにソ連が入ってきました。ソ連が撤退した後、力の空白を埋めたのがターリバーンでありアルカーイダでした。それが九・一一を生んで。
 こういう力の空白に焦点を当てて中東を見ていきますと、これは、今起きていることは、私はオオカミ少年であることを祈っていますけれども、残念ながら、中東はこのまま安定の方向に向かうというよりは、次の紛争と言っていいんでしょう、の種が今まかれている可能性があると、これも仮説ではございますけれども、思っています。つまり、中東は我々が思うほど、米軍が撤退することによって、ああ、良かったね、これでもう安定したねという状況ではない、むしろ逆になる可能性があるということでございます。
 シェール革命が起きて、アメリカは中東から依存を減らして出ていくんだという議論もありますが、これは間違いだと私は思います。むしろ、アメリカは残っていくだろうと思います。その上で、しかしながら、もう非常に、悲しいかうれしいかは別としまして、厳粛なる事実は、米軍はもう冷戦時代のような二正面作戦、陸軍を使う二正面作戦がもうできなくなっているということでございます。
 逆に言うと、一昔前であれば、中東で米軍が戦う、いいか悪いかは別としてですね、戦った場合でも我々は東アジアの抑止力を心配する必要はなかった。なぜならば、アメリカは二正面作戦ができたと我々は信じていたからであります。しかしながら、今の現実は、アメリカはそれはできない可能性がある。その場合に、では中東でもし紛争なり誤算に基づく摩擦が起きる、同時に東アジアでも何らかの紛争なり誤算に基づく対立が起こる、これを同時に対応できるかという問題が軍事的には生じてくると思っています。
 私は、間違っても誤解のないように願いますが、私は戦争をすべきだと言っているんではありません、戦争をどうやって回避するか、そのためにどのようにして話合いをすると同時に抑止をするか、そういう観点からお話を申し上げているつもりでございます。
 最後に、あと数分ございますので、二〇二〇年までに日本が何をすべきかという話を申し上げます。
 なぜ二〇二〇年かというと、これから富坂さんからお話があると思いますが、私は、十年ぐらいたちますと、中国の社会が、経済社会の本質が変わっていく時期に来ると思っています。という意味では、二〇二〇年までに中国が変わっていく、そして、場合によっては東アジア地域の戦略環境に激変が起こる可能性がある。それに十分備えた外交・安全保障政策を我々は持っているのかという観点から六つポイントをお話しします。これは仮説ではありません、私のざれごとでございます。
 第一は、今のように外交・安保が各省庁でばらばらになっている状況、これは何とかしなきゃいけないと思っています。迅速かつ機動的な政策の企画立案と実施、これはもう、例えばNSCというのは一つの議論でありましょう。しかし、私はNSCにこだわるつもりはありません。しかしながら、この戦略環境の激変に対応できるだけの組織を我々は持っているかいないかという問いはされるべきだと思っています。
 それからもう一つ、先ほども申し上げたように、中東と東アジアはこれから一つになっていく、戦域的にも一つになるし、政策的にも非常に関連が相互にするようになってくると思います。そういう状況の下では、今の政府の全体で、例えば外務省であれば中東局とアジア局が、申し訳ないですけど、全くばらばらに動いているはずでございます。ほかの省庁も恐らく同じでありましょう。しかしながら、中東の情勢と東アジアの情勢は実は一つだという発想でこれからは政策を考えていかなければいけない。なぜか。それは、中国の西側は中央アジアだからです。
 中国のことを本当に真剣に考えるのであれば、北京と日本の往復だけでは駄目なのです。これは、モンゴルもあり、ウイグルもあり、チベットもあり、それでやれと。何か騒動を起こせという意味ではありません。しかしながら、彼らの利益がそこにもあるということ、そしてそれを踏まえた上での中国との付き合い方を考えるべきだという趣旨で、やはり中東政策と東アジア政策というのは一つのものだというふうに思っております。私が中国と中東と両方やったから手前みそで申し上げているのかもしれませんが、私は、この問題意識は少なくともアメリカ人の友人も共有してくれているので、これでいいと思っております。
 時間がありませんので次へ行きますが、もし中東と東アジアでクライシスが同時に発生した場合、これどうなるかといいますと、恐らくアメリカは中東の方に引きずられていく可能性が高いと思っています。したがいまして、東アジアにおいてはもちろん対話も大事、交渉も大事、しかしそれが破れたときに抑止をしなければいけない、抑止は破れてはいけないのであります。その不足する抑止力をどうするかという問題がこの三つ目に書いてございます。海上警察力というのは海上保安庁のことを指しております。
 それから、この二十年、三十年、私は常に思うことでありますが、日本においては対中政策についてミニマムのコンセンサスもありません。全く意見が対立したまま、両方で。いや、それは結構なことだと思いますが、議論であれば。しかし、政策として昇華させるためには、与野党であれ、親中派であれ、嫌中派であれ、誰でもいいんですが、ミニマムのコンセンサスだけは必要であります。これがない限り、足下を見られてまともな外交ができない、こういった悪循環に陥るだけだと思っています。
 それから、もう二点だけ短く申し上げますが、軍事力というのは一種のはさみみたいなものでありまして、はさみというのは物を切るためにあるわけであります。しかし、もちろん自分を切ることもできる、自分を傷つけることもできます。じゃ、物を切るためにごたごた必要だけれども、はさみは要らないのかと。やっぱりはさみは要るのであります。物は使いようなのであります。はさみは使いようなのであります。軍事力も同じだと私は思います。軍事力について、過度なタブー視とか、それから過去の失敗に引きずられることなく、タブー視しない冷静な議論というものをやっぱり東アジアそして中東の安全保障を考える場合にはどうしても必要な視点であろうと思いました。
 最後が、偏狭なナショナリズムではなくて健全なペイトリオティズムをというふうに書きました。
 偏狭なナショナリズムに日本が、私はそうではないと信じておりますけれども、もしなってしまえば、これは中国と韓国と全く同じ土俵で、同じつまらない戦いをすることになるわけであります。それは日本としては絶対すべきでは私はないと思います。日本には多くの愛国主義者がいて、それは昔の愛国何とかではなくて、それと全く違う意味での愛国主義があるべきであります。偏狭なナショナリズムよりは愛国主義の方が私ははるかにいいと思っております。
 これで私のお話を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○委員長(石井一君) ありがとうございました。
 次に、富坂公述人にお願いいたします。富坂公述人。
○公述人(富坂聰君) ジャーナリストの富坂と申します。本日はお招きいただきましてありがとうございます。
 ジャーナリストとして週刊誌に籍を置きまして、それからフリーランスとして約二十五年間、中国報道に携わってきました。私のその視点から、幾つかの視点で特に日本と中国との外交関係についてお話しさせていただきたいと思います。
 まず一つ御指摘しておきたいのは、皆さんが日本で普通に接する中国の情報というのは、これは非常に精度が低いということを申し上げなきゃいけないと思うんですね。精度が低いと言うと語弊があるかもしれませんけれども、これは書き切れないと言った方がいいかもしれないですね。
 というのは、皆さん新聞の紙面を御覧いただければ分かると思いますけれども、例えば国内の政治に割かれているスペースと中国に割かれているスペース、比べてみていただければ分かると思いますね。あれだけ広い国で、あれだけいろんなことが起きている国で、国際報道面のほんの小さなところで中国が紹介されていると。つまり、ぎゅっとした、非常に特異な情報だけがそこに詰め込まれているということですね。そういう中で、中国というのは、そこでキーワードとして生まれたことがかなりパターン思考化として日本人の脳みその中に入っているという問題があるということを申し上げなきゃならないなと思いますね。
 例えば、昨年秋に起きました反日デモですね。これ、デモを起こした人々、デモの直後に中国の各地の公安が二十九人指名手配したんですけれども、この人たちに共通していたのは全員無職だったということですね。そういう、この無職であるそのデモを起こした人々と全体の中国というのを一つの中国という一つの主語でくくって話することには、もちろんこれは限界があるということを見なきゃいけないわけですね。
 中国が一つの主語で語られるということについては、やっぱりどうしても読者に分かりやすくするためにこれは一つの主語で語っていかなきゃいけない。つまり、ですから、その反日デモも後ろで糸を引いていた人がいるというロジックに変わっていくということですね。しかし、これは現実はそうではないわけですね。ただ、日本で一旦そういうふうな認識で始まってしまいますと、もう既にこれは修正することはできないと。そういう情報を基に日本が対中国の外交を決めていくということは極めて危なっかしいということは言わざるを得ないと思いますね。
 これは、例えば国際的に見たところでも同じようなことが言えるんですね。私は中国取材していて、中国が北朝鮮に対してすごく影響力があって、何かのときにぱちっとスイッチを切れば北朝鮮が干上がってしまうというようなことを言う中国人、ほとんどいないですね。特に、日本でも中国がキーだ、アメリカも中国がキーだと、北朝鮮問題は中国がキーだと言うんですけれども、そんなに自信を持っている中国人、私は、いるんでしょうかと、すごく不思議になりますね。実際には、もう北朝鮮は中国の言うことなんか聞かないというのが実情じゃないかと思います。
 私は二週間ぐらい前も中国行っていましたけれども、ある番組で北朝鮮分析を、中国のトップクラスの北朝鮮分析をする人間たちを集めて座談会をやったテレビの関係者に聞いたところ、どうですかと、中国は見通せますかと言ったら、いや、我々ははっきり言ってあの国の見通しなんか何にもできないから予測なんか立てられるわけないじゃないかという答えが返ってきました。これは私、正直なところじゃないかなと思います。ただ、日本では、不思議と中国が一ひねりすればすぐに北朝鮮が何か変わるというようなすごく短絡的な思考があるということですね。だから、その辺のところにおいて、やっぱりちょっと、まず情報はどうなのかというところから考えていかなきゃいけないこの問題かなというふうに感じます。
 例えば、中国に関しては、日本の書店に行って見ていただければすごく分かりますけれども、もう明日にでも崩壊するか、それかもう二十年後にはアメリカをしのぐ国になるかと、どっちかの本しか並んでいないですよね。この極論がずっとあるというのは、実は日本にだけ見られる現象ではなくて、これはアメリカでも全く一緒で、アメリカの議会でもドラゴンスレイヤーとパンダハガーといってどっちかになってしまう。これは中国と向き合った国の特徴なのかもしれませんけれども、日本と中国の今の距離を考えると、そろそろこのいわゆる単純な中国観というのから脱却していかないと苦しいと。
 ちなみに、ちょっと私申し上げておきますと、明日にでも中国が崩壊するという記事を書け、若しくは物すごくアメリカを超えるような超超大国になるぞと中国が大変だぞという記事を書けと。これは、どちらも明日にでも私はできます、やる自信がありますし。しかも、非常に説得力を持って、いろんな材料を持って皆さんに御提供することができますし、これは難しいことではないですね。同時に、物すごく戦略にたけていて強い国で好戦的な国だというふうに描くことも、これはもう材料にあふれています。逆に、非常に平和を愛し近隣諸国とうまくやっていきたい国であるということを描くのも実は簡単であるということですね。そこをちょっと考えておいていただきたいと。
 だから、それは一方の情報だけをとらえて書けば今日本の書店にたくさん並んでいる本みたいなことになるということが前提ですね。だから、そういうことではないところで中国を考えていくことはできないのかというのが私の一つ目の提案ですね。
 それでもう一つ、日本には今対中国外交を嘆く言葉がすごくあふれておるんですね、自虐的と言ってもいいかもしれないですけれどもね。一つそこで考えていただきたいのは、そんなに悲観すべき状態なのかということは、私は常々考えますね。
 というのも、尖閣諸島の問題というのはちょっと特殊な状況なので、ここでは時間の都合で私触れませんけれども、国と国の利害ということを考えますと、二〇一二年は反日問題もありましたのでちょっと特殊になりましたけれども、日本は毎年中国から三兆円近い貿易黒字を稼いできたではないでしょうかということですね。何か取られていると、技術が取られているとか中国にやられているというふうに言われているんですけれども、圧倒的貿易黒字を築いているのが日本で、しかも中国が、中国の経済の一つの柱であった貿易、輸出、これで要するに中国が輸出を伸ばして黒字を稼げば稼ぐほど自動的にこれは日本の部品をたくさん仕入れて加工しなきゃいけないので、自動的に日本の貿易黒字が広がるという構造までつくり上げているわけですね、日本は。だから、そういう意味で、本当に今、日本の多くの国民が嘆いているような、やられたやられたというような状況なのかということから考えると、私はそうではないと思いますね。
 仮に、これまでの中国の台頭ということを考えますと、確かにGDPで日本を上回る規模になりましたけれども、そういう発展の中で、例えば日本がそれにくみをしない、中国と距離を置くということやったときに、じゃ中国は台頭しなかったかというと、そうではないと思います。それはあっという間に欧米の企業がその穴を埋めて、日本がその枠外に置かれたというだけのことなので、日本はそういう意味では別に選択を誤ったわけでもなく、日本はそういう世界のトレンドの中で日本が取るべき利益をきちんと取ってきたということを言ってもいいのではないかなと思います。
 ですから、それが世界経済のトレンドですから、だから、幸せな時期がやってくるというのは順番にやってくるだけの話ですね。そこはもう中国だけに渡さないというのは、これは日本一国がそんなことを考えてもなかなか難しいだろうということでないと思います。だから、私は、これはそれほど悲観することではなくて、日本は割とうまく中国を使いこなしたんじゃないかなという視点は今逆に必要なのではないかなと思います。
 それで、更に言えば、中国にじゃ配慮するのかということをよく言われるんですね。中国に配慮すべきと、そういうことをよく言われますけれども、配慮する必要はないと思うんですね。だから、日本は日本がやるべきことを淡々とやればいいと思うんですね、別に配慮する必要はないけれども。ただ、日本の利害を考えた上でベストな選択をしていくというのが私は重要ではないかなというふうに思います。
 中国は今、中国経済絶好調というふうに認識されていますけれども、もう、ちょっと今陰りが見えてきていますね。先ほどちょっと宮家さんの方からも触れられましたけれども、なかなか厳しい状況にありますね。
 中国は今二つ流行語がありまして、中所得国のわなというのと、もう一つは、日本は老人になる前に金持ちになったけれども、中国は金持ちになる前に老人になってしまったという二つの流行語があるわけですね。これはどういうことかというと、世界の工場として世界からの投資を集められた時期というのはもう終わったということですね。その非常に幸せな時期に、中国はある幾つかの世界に通用するブランドを持ちたかった、しかしできなかったということですね。そういう中で、これから要するに世界が中国に向いていた投資というのが別の国に向いてしまう、これを中所得国のわなといってかなり焦っていますね。
 そういう状況でありますので、そこで日本が実際に本格的に警戒して何をしなきゃいけないと、中国を封じ込めなきゃいけないという状況なのかというと、私はもう少し冷静に見た方がいいと思います。
 その一方で、いわゆる日本がこれまで弱腰で、弱い姿勢であったからこそ中国が増長したというような議論が日本の民間にはかなりありますけれども、じゃ本当に中国を、日本が少し態度を変えたことで封じ込められるかというと、私はそれはちょっと、それはまた逆にその現実性がないんじゃないかなと思います。
 これは現代の社会で出していい例かどうかは分かりませんけれども、一九六〇年代、七〇年代は中国とソ連との関係が非常に悪化したところで、これはたくさんの論文も出ていますけれども、実際に核戦争のぎりぎり手前まで行ったという状況がありました。そのときは、中国もソ連が核ミサイルを落とすという選択を知っていたとも言われていますね。そういう中でもソ連との対決姿勢は一向に崩さなかったというのがあります。そういう過去の例もありますので、力でじゃそれを、隣にある国を、例えば北朝鮮も含めて本当に日本が思うような外交を力でじゃ実現するということが現実的なことなのかというと、私はそうは思わないですね。
 だから、そういう意味でいうと、やはり少し、いわゆる日本が現実的な道として中国とどういうふうに付き合っていくのかというのは、少し今の姿勢からは変えて考えていかなきゃいけないなと思います。
 私は、最初に述べた中国報道の部分にも関連しますけれども、森に行ってその森の恵みを何か取ってこようと思えば、そこにはスズメバチもムカデもおるわけですね。しかし、スズメバチ、ムカデばっかりおるということばっかりを強調しても、それは正確なことではないと思いますね。しかも、それが分かっているならば、それなりの対策を取ればいいということではないかなというふうに思います。
 今、少し私、心配しているのは、中国の宣伝戦に日本が逆に乗っけられてしまうんじゃないかなということがありますね。というのは、これは昨年秋に訪中しましたパネッタさんと習近平さんの会話の中で始まったことですけれども、日本が世界反ファシズム戦争勝利の成果を否定しという言い方をしているわけですね。つまり、これは言い直すと、ファシストが復活していますよ、日本で、ということを言ったわけですね。
 これは、今年に入って習近平さんがロシアに訪問した後ある大学で講演したときにも引きずられた価値観で、つまり中国はもう宣伝戦に入っているということですね。まあ宣伝戦略に入っているということですね。この宣伝戦略というのは、日本を、あの国はまた再びちょっと怪しい動きをしていますよということに押し込めていこうということですね。だから、ある意味、これは私は現代の田中上奏文ではないかなというふうに見ております。
 だから、そのときに日本が、日本の社会を見てくれ、どこに軍国主義者がいますか、どこにファシストがいますかと、これはもう当然ほとんどの日本人が共有できる感覚じゃないかなと思います。
 しかし、中国にとってそれが本当であろうとなかろうと余り関係ないということですね。これは、世界がそのキーワードを利用して日本を封じ込められればいいということなので、取りあえず世界に向かって一つ宣伝力のあるキーワードを投げてきたということですね。そういう中で日本がどういう動きをするかによって、中国は、ほら見てください、中国の言ったとおりでしょう、日本の今の現状を見てくださいということになっていくんじゃないかなと思います。
 だから、ちょっと最後、時間がちょっと押してきましたけれども、最後一つ私も申し上げたいのは、そういうざっくりした大まかな対中戦略ということではなくて、より具体的にどこをどう穴を埋めていこうと、それは将来心配されることは何かということを具体的に埋めていくという方向に考え方を変えた方がいいんじゃないかなと思います。
 例えば、これは本当に数え上げれば切りがないのですけれども、例えば、尖閣諸島の次に来る問題は何ですかと聞かれて答えられる方というのは何人いらっしゃるのかなと思いますね。例えば、長崎の周辺にある小さな島がいっぱいありますけれども、次そこ来ませんかと。中国の周辺の海はもうほとんど魚が捕れない状態になっていますので、漁師は、これはもう大量に日本に向かってくるというのは、これはもう見えているわけですね。だから、そこに蓋をしていますかということですよね。
 あとは、今、中国経済ちょっとがたがたになってきている中で、ある意味、日本の市場を荒らすような、いわゆる過剰生産になった製品なんかがどっと日本に流れ込んでくるかもしれないとか、そういった様々な問題が考えられる。
 だから、日本としていわゆる大きな対中戦略というのをがらりと変えるということじゃなくて、個別の問題に対処していくということが重要なんじゃないかなというのが私の考え方です。
 どうもありがとうございました。
○委員長(石井一君) ありがとうございました。 以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。

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