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日銀総裁候補 所信聴取、質疑速記録(参・議院運営委員会)

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平成二十五年三月十一日(月曜日)(未定稿)午前九時開会

○委員長(岩城光英君) ただいまから議院運営委員会を開会いたします。

 まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。

 日本銀行総裁の任命同意に関する件のため、本日の委員会に参考人として日本銀行総裁候補者・アジア開発銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、所信を聴取することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(岩城光英君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

    ─────────────

○委員長(岩城光英君) 次に、日本銀行総裁の任命同意に関する件を議題といたします。

 候補者から所信を聴取いたします。黒田東彦君。

○参考人(黒田東彦君) 黒田でございます。

 本日、こうした機会を与えられましたことに対しまして、深く感謝をいたしております。

 私は、二〇〇五年の二月からアジア開発銀行の総裁としてアジアの経済発展と貧困削減に取り組んでまいりました。この間、アジアは、世界金融危機から他地域に先駆けて回復し、高い経済成長で世界経済を牽引しております。日本は様々な形で支援を行いまして、アジア諸国の経済成長に大きく貢献してまいりました。また、日本はアジア諸国の貿易相手国としても極めて大きな地位を占めております。その意味で、日本がデフレから脱却し、持続的な経済成長に復するということは、アジア、さらには世界からも期待されていることだと考えております。

 しかしながら、日本経済は十五年近くデフレに苦しんできました。これは世界的に見ても異例なことです。物価が下落する中で、賃金、収益が圧縮され、消費、投資が減少するということで、更なる物価下落に陥るという悪循環が日本経済を劣化させています。デフレからの早期脱却は、日本経済が抱える最大の課題であります。

 物価安定は中央銀行の責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要です。過去十数年間、日本銀行は様々な取組を行ってまいりましたが、デフレ脱却には至りませんでした。しかし、現在、政府がデフレ脱却と経済再生を実現する方針を明らかにし、緊急経済対策などの対応を取ったことが好感され、景気回復の期待を先取りする形で株価が回復し始めています。

 中でも、本年一月の共同声明は、政府と日銀がそれぞれの課題を明確に設定し、責任を持ってそれを実現することを宣言したものであり、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大きな第一歩だと思います。特に、日本銀行が二%の物価安定目標を設定し、これをできるだけ早期に実現することをはっきり宣言したことは極めて画期的なことと評価しております。もし、私が総裁に選任されましたならば、この物価安定目標を一日も早く実現することが何よりも重要な使命となると考えております。

 これまで、日本銀行は、デフレ脱却に向け、国債だけでなく社債、ETFなど様々な資産を買い入れてきました。その点は評価できますが、その規模、具体的な買入れ対象などについては、できるだけ早期に二%の物価上昇を実現するという強いコミットメントを実現するために十分なものとは言えません。資産買入れを始めとする具体的な緩和方法について、市場への影響なども見極めつつ、何が最も効果的な役割かを探っていくことが必要です。

 また、金利引下げ余地が乏しい現状では、金融政策運営について市場の期待に働きかけることが不可欠です。私が総裁に選任されましたならば、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向け、やれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと考えています。

 さらに、政府との連携確保も重要です。具体的な金融緩和の手法については、基本的に日本銀行に任せるべきですが、金融政策は、政府の経済政策と整合性を持って運営することで、より高い効果を発揮できるわけでございます。政府と日銀のより緊密な意思疎通が重要だと考えております。

 一方、共同声明では、政府は、機動的な財政政策、成長力、競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むこととされています。もとより、日本銀行は、自らの責任において、物価安定目標の早期実現を目指して金融緩和を推進するものです。ただ、金融緩和と並行して、政府が実需をつくり出し、消費、投資の拡大を通じて賃金、雇用を改善することができれば、そこから更なる物価上昇につながる好循環が期待できます。また、財政運営への信認低下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。共同声明に沿った政府の取組を期待したいと思います。

 また、日本銀行として、経済、金融のグローバル化に対応することも重要です。日本銀行は、物価の安定だけでなく、金融システムの安定という使命を負っておりますけれども、近年、金融規制などについて中央銀行間の連携協力は重要性を増しています。また、金融政策の意図や方向性について、諸外国に説明する機会も増えています。各国中央銀行などとの連携、調整に努めることが重要だと考えています。

 私は、これまで、政府機関、国際金融機関、大学などで勤務してきましたが、どのような職務にあるときも、与えられた職責を果たすため最善を尽くしてまいりました。日本経済が重要な局面にある中で、日本銀行総裁の果たすべき役割は極めて重大です。もしその重責を果たすべき機会を与えていただければ、これまでの経歴で培ってきた経済、国際金融についての知見、内外の人的ネットワーク、組織のトップとしてのマネジメント経験などを生かし、全身全霊を込めてその職務に邁進していく所存でございます。

○委員長(岩城光英君) 以上で候補者からの所信の聴取は終了いたしました。

 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(岩城光英君) 速記を起こしてください。

 これより候補者に対する質疑を行います。

 質疑のある方は順次御発言願います。

○櫻井充君 おはようございます。民主党・新緑風会の櫻井充です。

 まず、ちょっと基本的なことを何点かお伺いしたいと思いますが、黒田総裁候補は今までの日銀の金融政策に批判的なことをおっしゃっておりましたが、もう少し具体的に、どの点が問題なのか、そこについて説明いただけますでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 私は、日本銀行は過去十数年にわたっていろいろな努力をしてきたということは事実でございますが、客観的な事態として、一九九八年以降ほぼ十五年にわたって、二〇〇八年の世界的な一次産品上昇の時期を除きますと、十五年にわたってデフレが続いてきたと。これは世界にもない現象でして、これを、新興市場国から安いものが入ってくるとか為替が一時円高になったとか、その他いろいろなことでその時々の物価の動きを説明することはできますけれども、十五年にわたってデフレが続いてしまった、それを是正できなかった、あるいは放置してきたということは、やはり中央銀行としての日本銀行の責任が果たされてなかったということではないかと。そういう意味で、私は日本銀行の金融政策について批判的な意見を申し上げたわけでございます。

○櫻井充君 もう少しより具体的に、総裁になられたら、じゃ逆に言えばどうされるんでしょうか。

 生産人口が、消費者人口が落ちてきていて、需要が落ちてきているわけです。これはGDPの伸びを抑制していることも含めてですが、物価の上昇を抑えてきている私は最も大きな原因ではないのかと、そう思います。それから、小泉改革で過度な価格競争を強いられたと。競争すれば幸せになれるんだと言われて、どこも価格競争をやり続けてきた結果、物価が上がってこないとか、様々な要因があると思うんです。

 じゃ、より具体的にお伺いしたいんです。金融政策で、ここはちょっと端的にお願いしたいんですが、金融政策でどうやって物価を上昇させようとお考えなんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) まず、前段おっしゃいました、委員がおっしゃいました、人口減あるいは価格競争の激化ということは物価に対して影響を与えたことは事実でございます。ただ、人口が減っております国はヨーロッパにもたくさんありますし、価格競争が厳しいという意味では米国も極めて厳しいわけですけれども、欧米共に大体二%程度の物価上昇が続くということで、デフレに全くなっておりません。

 金融政策でどうやってデフレから脱却するかということでございますが、通常ですと、短期金利がまだゼロになっていない段階ですと短期金利を下げていくという形で金融緩和をし、それが長期金利とかあるいは株式その他に影響を与え、さらには消費、投資に影響を与えて実体経済を回復させる、あるいは物価上昇期待をつくり上げて物価も実際に上がっていくという、そういう関係になっていると思いますけれども、日本の場合は既に短期金利はほぼゼロということでございますので、短期金利を下げるという形では経済を刺激したり物価を上げたりすることはできません。

 したがって、どうしても、量的緩和を通じて、単に短期金利を下げるのではなくて長期金利を下げていく、あるいは、国債の金利が長期金利のベンチマークであるとすれば、その上にリスクプレミアムが乗って民間の社債の金利とかあるいはREITとかその他のものが決まってくるとすれば、そういうリスクプレミアムを縮めていくということも必要かもしれません。ですから、ベンチマークの長期の国債の金利を下げていく、それからリスクプレミアムを縮めていくという形で、全面的な、全般的な金利の低下、金融の緩和、それが消費や投資に影響していく、さらには物価上昇期待というものを含めて物価に影響していくと。

 これは、別に日本だけの特殊な事情ではなくて、欧米においても同様であると思っております。

○櫻井充君 済みません。私はちょっと理屈、今の話で、理論でよく分からない点がありまして、それからもう一つは、その期待感といいますか、そこに働きかけるということなんですが、果たしてそれがそれで、そういう期待感でこたえてくれるのかどうかというのは一番大きなことだと思うんですよ。

 前回、衆議院での議事録も全部読ませていただきましたが、長期国債を買っていくんだというお話がございました。長期国債を買うと、どうして金融緩和につながっていくんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 長期国債を大量に買っていきますと、当然ですけれども、長期国債の価格が上がります。つまり、長期国債の金利が下がっていくわけでございます。長期国債は長期金融資産の一種のベンチマークでございまして、一番安いところにあるわけですが、その金利が下がっていくということは、その他の民間の様々な長期金利を含めて下がっていく傾向があると。これは経済にもプラスですし、何よりもデフレを、デフレ期待を減らしていくという意味でも有効であるというふうに思っております。

○櫻井充君 そこから先が、長期金利が下がるところまではいいんですよ。長期金利が下がりますが、まず一つ、まず国債のやり取りを考えてくると、これは政府から直接調達するものではなくて、市場の、民間金融機関から買い入れるということになりますね。

 問題はここからなんですよ。民間の金融機関が、資産が国債からキャッシュに変わりますね。このキャッシュを企業に融資してくれれば、初めてそこで市場にお金が出ていくことになりますよね。ところが、今の民間の金融機関の行動を見ていると、結果的にまたそれを国債に変えてしまうということを繰り返してきています。そうすると、中央銀行が何らかの政策を取ってきた、私はやってきたと思っているんですが、問題になるのはむしろ民間の金融機関と企業との関係であって、そこについては今のお話では残念ながら解決しないんじゃないだろうか。そして、繰り返しで恐縮ですが、市場にお金が出ていくということにはならないんじゃないかと思いますが、この点についていかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 金融機関の企業に対する貸付けが低迷してきたことはおっしゃるとおりでございます。ですから、そこを改善すべく日本銀行も様々な措置を講じてきましたが、残念ながら、企業への銀行の融資が大きく拡大していないということはそのとおりでございます。

 ただ、金融緩和の実体経済への影響のルートとしては、銀行の貸出しということだけではなくて、社債とか、あるいは株式とか、その他の金融資産の価格が上がる、逆に言うと、金利とか何かが下がるということを通じて、企業が設備投資にそういったことで得られる資金を振り向ける、あるいは消費者、家計が消費を増やすということがあるということは経済理論の教えるとおりでありまして、銀行への貸出しだけがその唯一のチャネルですと確かに難しいと思いますけれども、それ自体についても引き続き日本銀行は努力していくと思いますが、その他のチャネルを通じて経済、特に物価に対する影響を確保していくということが重要だと思います。

○櫻井充君 今のお話で、株価が上がると。株価が上がって、確かに、例えば高島屋とか、こういったところの利益は上がるんです。現在、今そうなっております。一方で、スーパーの売上げはどうなっているかというと、依然低迷したままでして、要するに、株式を持っている方々に対しては今の理論で私はいいと思っているんです。もう一つ申し上げておきたいのは、アメリカがそうだと思います、アメリカは日本以上に株式をお持ちですから。ですから、これによって経済が活性化してくるということはあるとは思います。

 でも、一方で、アメリカで、株価は今最高高を付けてきておりますけれども、失業率は依然七・七%で高止まりしてきていると。つまり、株価と実体経済というのは、私は乖離してきていて、ある種の富裕層にとってはいいかもしれないけれども、それ以外の方々に対しての恩典はないんじゃないのかと、そう思います。

 ですから、今の理論で本当に金が回っていくようになるのかどうか分からないことと、もう一つは、実需がない中で、実需がない中で、金融の関係だけで果たして企業は設備投資をするんでしょうか。バブルのときに、そのバブル崩壊後、一番企業が苦しんだのは、私は過剰な設備投資だと思っています。つまり、今のような金融政策で設備投資を促していくということになると、結果的にはバブルをつくり上げ、これが崩壊したときにまた企業が二十年前のあの当時と同じようなことになってしまうんじゃないかということを心配しているんですが、この点についてはいかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 一九八〇年代のバブルは確かに異常なバブルでございまして、その後に様々な問題を引き起こしたことは御指摘のとおりです。金融機関の不良債権の問題にせよ、企業の過剰設備にせよ、そういうことだと思います。

 したがって、資産価格というものは、株価にしてもその他の金融資産の価格にしても、それ自体、金融政策の目標、目的、ターゲットではありませんけれども、世界の中央銀行は資産価格の動向にも十分配意しながら金融政策を進めておりまして、そういったことは今後とも日本銀行として重要であるというふうに思っております。

 なお、株が上がって、それが設備投資とか消費にプラスの影響があるということは実証されていることですが、それだけで直ちに国民経済のバランスの取れた成長が達成できるかと言われますと、それは確かに難しいと思います。したがいまして、財政政策の面での様々な施策というものが均衡の取れた経済成長を実現する上で極めて重要であるというふうに思っております。

○櫻井充君 僕は原因というのは相当複雑だと思っていまして、その中央銀行の問題というのがどれだけ大きいのかというと、私はそこの認識がちょっと違うと思っているんです。それは、ただし、中央銀行の総裁になられる方であれば、中央銀行をこう変えていかなきゃいけないという強い意思を示されるのもこれまた当然のことだとは思っています。

 今の政策の中で、安倍総理の政策の中で、実を言うとまだ何も実現していないんですよ。何も実現していませんが、気分が変わって、円安になり株高になってきております。このアナウンスメント効果というのは非常に大きいと思っていて、私は、白川総裁という方は随分一生懸命やってこられたと思っていますが、そのいろんな政策の伝え方というのにまあもしかすると問題点もあったのかもしれないと思っています。

 その中で、もう一つお伺いしておきたいのは、今の円安で今度は副作用も出てきておりますよね。円安で輸出業界、大企業は利益をこれから出すんだろうと思います。ただし、まだ量が増えているわけではありませんで、為替によって利益が出ているだけです。ただし、貿易収支は、これは赤字幅が拡大してきておりますから、今の日本の産業構造にとって急激に円安に振れていくことそのものがいいこととも思えません。

 もう一点申し上げれば、今やストックを生かして所得収支で経常収支のところを大幅にプラスにしておりましたから、円安になることそのものが外国との取引全体を含めても必ずしもプラスになっていないという現状がございます。

 ただ、これはこれとしておいておいて、今、実体経済上何が問題になってきているかというと、私は宮城県の選出ですけれども、ガソリン価格がもう十円以上上がっています。それから、まだまだ寒いですから灯油は非常に大事ですが、十八リッターで二百円以上上がってきていて、国民生活に大きな影響が出てきています。それから、電力料金も上がりますから、中小企業で例えば電気を使ってやっていらっしゃる方、メッキとかですね、こういう業界の方々とか、決して円安になったから良くなっているわけではなくて、むしろ原材料を仕入れて粗鋼を加工している中小企業の方々、これ、価格転嫁できれば物価が上がってくると思います。

 私は、唯一物価が上がるというやり方は、恐らく円安にしてコストが高くなって、いわゆるコストプッシュ型で物価が上がるということはあるとは思っているんですが、残念ながら金融政策で確実にこういうふうになりますねというのは理論上難しいと思っているんです。

 いずれにしろ、ここで問題になるのは何かというと、中小企業で価格転嫁ができなくて苦しんでいる人たち、それから今後苦しむであろうと想像される人たちがおります。この人たちに対して、要するにこの副作用に関してどのようにお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 現在、円安が進んでいるわけですから、この相当部分は、リーマン・ショック後、円が言わば独歩高になって、アジア通貨に対しても大きく上昇しただけではなくてドルやユーロに対しても上昇したということで、行き過ぎた円高があって、それが是正される過程にあるということが一つだと思いますし、もう一つは、委員おっしゃったとおり、金融緩和その他の期待から円安に進んでいるという面もあると思います。

 為替レートは、円高であればいいというわけではないし、円安であればいいというわけではなくて、一定の実体経済、マクロ経済と一番バランスの取れた、まあ学者たちは均衡為替レートと言うでしょうけれども、そういうものであることが望ましいわけでして、経済のファンダメンタルズに即した形で為替が市場で自由に変動するというのが一番望ましいわけですけれども、ややもすると行き過ぎたことがあると。それに対して、為替の安定の責任は政府にありますので、政府が適宜必要な措置をとるということだと思いますが、今現在進んでいることは、恐らくリーマン・ショック後の行き過ぎた円高の是正過程であろうと思います。

 その中小企業その他に対する影響というのは今委員が御指摘のあったとおりでありまして、そこは十分注意深く見ていかなければならないと思います。日本銀行は御承知のように日本全国に支店、出張所を張り巡らしておりまして、そこから様々な情報が入ってくるわけですけれども、それをいかに生かして、実際、地域経済や中小企業がどういう状況にあるか、それを踏まえて金融政策を決定していかなければならないというふうに思っております。

○櫻井充君 いや、それはおっしゃるとおりなんですよ。だけど、じゃ、例えば、少し具体的にこちら側もお伺いしなきゃいけないのかもしれませんが、今の状態から更に金融緩和を本当に実際上進めていく、私は金融緩和が進むのかどうかよく分からないんですが、日本銀行として更にアクションを起こされることになると、一般論から申し上げれば、更に円安が進むことになりますね、これは理屈上です、今度は。

 そうすると、今の状態から更にその金融緩和を進めていかなきゃいけないのか。これについてはどう思われますか。

○参考人(黒田東彦君) 初めに所信で申し上げましたとおり、現時点の日本銀行の金融緩和の状況では二%の物価安定目標を早期に実現するということは難しいと思いますので、当然、更なる金融緩和が必要であるというふうに思っております。

 なお、委員御指摘のとおり、他の事情にして等しければ金融緩和しますと為替が下落する傾向があるわけですけれども、もとより、他の状況がいつも同じわけではなくて、例えば、金融緩和を通じて、さらには政府の機動的な財政運営、成長戦略等を通じて実体経済が高い経済成長を実現するようになれば、今度は逆に、当然ですけれども、円高に振れてくるという傾向もあるわけでして、金融緩和の事態だけを取りますと為替を下落させる傾向があることは理論的に、また実証もされていると思いますけれども、それがいつまでも続くというわけではないと思っております。

○櫻井充君 いや、これまで中央銀行、相当批判されてきて、金融政策だけ取り上げて、今ずっとおっしゃってきて、今ここで金融政策のことについてお伺いすると、それはほかのことだというふうに逃げられるのは、私はちょっとそれはおかしいと思いますよ。

 済みませんが、ただ、円安の話をちょっとだけさせていただくと、十月の一日ぐらいから雰囲気変わってきているんですよ。これは、ソフトバンクが二兆円で米国企業を買収しようとした、ドル需要が高まってきた、これが一つ。それからもう一つは、相当MアンドAが進んできていまして、強い円を使ってやってまいりました。私が財務副大臣のときにJBICにMアンドA用の資金を十兆円用意させていただきましたが、強い円を使って海外を買収していかない限りは円安を是正できないんじゃないかと思っていて、その流れもあって、円高がこれ以上進むとまずいよねという格好で変わってまいりました。

 もう一つは、貿易収支が大幅な赤字になったので、これはシカゴのマーケットが全てを表すわけではありませんが、シカゴのマーケットでは十月の一日ぐらいから急激に円安に振れてきているんです。十二月の上旬、要するに総選挙が行われた辺りから更に加速して円安が進んでいったので、ここはもう安倍政権ができて大胆な金融緩和政策を行うからこういうふうになるんだろうというふうに思ってきているんだと思っているんですが、改めてもう一度お伺いしておきたいんです。

 今のまま私は行くと、確かに株は上がっているんです。でも、これは株が上がっているといっても、円安になっていますから、これはドルで見たら、円で見ればそういうことです。だけど、ドルで見ればどうなっているかというと、円が安くなるということは、株はもちろん必然的に下がっていることですから、ドルで見れば割安感が出るからそこに投資してくるということだと思っていて、それほど大きな変動があったようには思えません。

 それはそれとしてです。株式で、繰り返しですが、株高で、その株式を持っている方々にとってはプラスかもしれません。一方で、円安になって実体経済上どうかというと、株式を持っていない方々の生活は、これから物価が上がってきますから苦しくなってまいります。そうすると、賃金がいつ上がるかということが一番大事なことになってくるんだと思いますが、賃金はいつごろ上がってくるというふうにお考えなんでしょう。

○参考人(黒田東彦君) まず最初に一言お断り申し上げますけれども、中央銀行としての日本銀行の最大の使命は物価の安定でございまして、当然その責任があるわけでございます。ただ、為替とか実体経済の全てについて中央銀行が責任を負うということではないというのは世界のグローバルスタンダードでございます。

 そういうことを前提にした上で、金融緩和が進んでまいりますと、特にデフレ期待というものがだんだん縮小してきますと、当然ですけれども、企業は価格を上げようとする、あるいは労働者は賃金を上げる要求をしてくるということでございます。そのときにどちらが先に出ていくのかということになりますと、過去の例を見ますと、多くの場合、先に物価が上がって、その後賃金が上がってくるというのが多いようでございます。

 逆に言いますと、デフレがずっと続く中で、物価がどんどん下がっていって、賃金はその後追い的に下がって実質賃金が上がるという局面があったわけですけれども、今回、金融緩和を進めていく中で物価と賃金がどのような動きをするかというのは、一概に言えませんが、委員のおっしゃるような懸念というものは十分念頭に置いて金融政策をやっていかなければならないと思っております。

 ただ、何度も申し上げて恐縮ですが、中央銀行の最大の使命は物価の安定、具体的には二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということにあるというふうに認識しております。

○櫻井充君 その点については心強いと思っておりますが、私は日銀の限界というのもあると思っています。日銀の限界があって、私は、白川総裁は随分やってきたと思っていますよ。世界で先駆的なことをずっとやってきているわけですからね。

 ちょっと視点を変えて一点お伺いしておきたいんですが、官僚出身者だからといって私は組織のマネジメントがきちんとできるとは思っておりません。済みません、官僚組織の問題点というのはどこにあるとお考えでしょう。

○参考人(黒田東彦君) 私もアジア開発銀行総裁として八年間アジアの各国の状況を見てまいりましたが、官僚組織それぞれに違います。日本と中国も違います。中国とインドも違いますし、インドネシアやフィリピン、マレーシア、それぞれ違いますが、多分、官僚組織のいい点というのは、政府が、具体的に言えば、政治家が一定の戦略とか政策を決めたときに、それをいかに実現するか、それをできるだけ速やかに実現していくかという観点からは、やはり官僚組織が整備されている国ほどその政策の実現が速やかであって、官僚組織が整備されていないと、せっかく政治家、内閣なり大統領が政策を決めましてもそれが実現されないという傾向があるという意味で、官僚組織の強みというのはそういうところだと思いますが、逆にそれが、裏返しに言いますと、官僚組織がずっとやってきた政策の実現に余りにもとらわれてしまって、政策が変わったときにそれをきちっと実現していくということが苦手な、あるいは速やかにできないという場合があるわけでございまして、官僚組織の強みは、先ほど申し上げた政策を実現する、コンティニュイティーというか持続性だと思いますが、逆に言いますと、政策が変わったときにそれを速やかに実現できるかと、その点でいろいろな問題をはらんでいることは、私自身、官僚の出身の一人として感じております。

○櫻井充君 いや、今の答弁ですごくほっとした面もございます。というのは、ある官僚が言っていたんですが、戦艦大和はUターンできないんだと言われまして、これ、けだし名言でして、一度決めてしまうと間違っていたと思ってもその方向をすぐに変えてくれないんですよね。今の金融政策も、実を言うと相当機動的に変えていかないと問題点が大きくなってしまうということがあると思っているんです。例えば、アメリカでも、住宅バブルだと分かっていながらFRBはあの時点で金融緩和政策をやめなかったんですよ。だから傷口が大きくなりました。

 そういう点でいうと、中央銀行の総裁が判断していくというのは非常に大事なことでして、これを本当に毎月毎月、極端な言い方をすると方向性変えなきゃいけなくなるような場合も出てくるかもしれなくて、こういったことに関して、先ほど黒田候補の御持論はお伺いいたしました。

 私は、問題点があると思っております。必ずしも全てがプラスだと思っておりません。プラスの面もあることも重々理解した上で、問題点もあることも、私はそう考えておりまして、そういう意味で、ほかの方々は実現できなかったら辞めるか辞めないかという話をされましたが、私はそれは非常に失礼な質問だと思っていて、そういうことではないんだと思っているんです。

 御自身の方向性が間違っていると、そう考えられたら、持論を捨て去って方向転換する勇気をお持ちですか。

○参考人(黒田東彦君) もとより、そういった覚悟でおります。

 したがって、経済の実態、金融の状況が変化すれば、当然金融政策も大胆に変化させていくことになると思いますが、この二%の物価安定目標ということ自体は、恐らく欧米、この二十年ぐらいの間にだんだん中央銀行がこの二%程度の物価安定目標というものを設定して、ずっと維持してきておりますし、それはリーマン・ショックその他の状況にもかかわらず維持され、達成されてきておりますので、二%の物価安定目標というもの自体が簡単に変わるとは思いませんけれども、それを実現するための金融政策の在り方、二%を上回るようなことは望ましくないわけですし、下回ることも望ましくないわけですから、当然、経済、金融の実態に応じて機動的に政策は決定されなければならないというふうに思っております。

○櫻井充君 イギリスを中心とした昔の英国領のところの中央銀行はそういう考え方取っていますが、ほかのところはちょっと違うんじゃないですか。ほかの国々は、経済を活性化するというか、経済を好転させていく、その際に物価が二%程度上がるということがふさわしいというふうに言っているだけの話であって、元々二%の物価を引き上げるということを言っているのは英国だけではないんでしょうか。違いますか。

○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、英国あるいはアングロサクソン系の国と、それから米国あるいは欧州、ユーロ圏と少しずつ違っていることは事実です。ただ、現時点でいいますと、ほとんど全ての中央銀行が言わば二%程度の物価安定目標を設定して、それを実現するということを政策目標にしております。

 恐らく、この物価安定目標というのは、一種のアンカーになって、実体経済が過熱して物価が上がっている、それ以上に上がっている、あるいはそうでなくて物価が下がっているというような事態をどうやってできるだけ早く安定した二%程度に持っていくかというときに、マーケットのそういう中期的な物価の一種のアンカーのようなものを設定しているという機能があると思いますので、アングロサクソン系の英国その他と、それから欧州、米国と御指摘のように少し違うんですけれども、そのアンカーとしての物価安定目標という、ほぼ二%ぐらいをみんな、一部二ないし三と言っている国もありますけれども、二%程度をアンカーにして金融政策を運営しているという点では基本的な違いはないような感じを持っております。

○櫻井充君 時間になったので、これで終わらせていただきます。真摯な御答弁いただきまして、本当にありがとうございました。

○中西健治君 みんなの党の中西健治です。

 私は、以前、証券会社で国際金融畑で働いておりましたので、黒田財務官の仕事ぶりというのは結構近いところで見ていたというふうに私自身は思っております。

 今日は、基本的な考え方についてまずお伺いしたいというふうに考えております。

 まず、日銀の政策目標についてお聞きしたいと思います。

 日銀法改正については、衆議院の方でも、法改正は政府、国会の決めることだからコメントしないと、これはそういうスタンスというのも見識だというふうに思います。

 現行日銀法の下でも、金融政策の理念として「国民経済の健全な発展に資すること」と書かれておりますので、これから次元の異なる金融政策、レジームチェンジということであれば、この現行日銀法の下でも政府との協議を通じて、例えばFRBのような雇用の最大化ですとか、それから、イングランド銀行の次期総裁、カナダ人のカーニー総裁となるということが決まっていますけれども、カーニー氏は名目GDPを政策目標として提唱をしておりますけれども、こうしたものを政策目標に加えるというお考えはないでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) ただいま御指摘のとおり、FRBは、いわゆるQE3という現在の量的緩和政策の中身としまして、二%の物価安定目標を実現しつつ、失業率が六・五%以下になるまで無制限の金融緩和を続けるということにコミットをしております。

 それから、マーク・カーニー・カナダ中央銀行総裁、この方にも私も何度もお会いしたことございますが、持論として、名目GDP、いわゆる消費者物価の上昇率よりもむしろ名目GDPをターゲットにした方がいいんじゃないかという御意見を持っておられるということも存じておりますが、実は、英国の物価安定目標、インフレーションターゲットというのは、英国のイングランド銀行自体が言っておりますけれども、フレキシブル・インフレーション・ターゲットと申しまして、別に二%というのをきっちり守れというのではなくて、そのプラスマイナス一%の中で、当然雇用とかそういうのも見ながら運営していくということになっております。

 日本銀行の最大の使命が物価の安定、それを通じて健全な経済発展に資するということであるということはおっしゃるとおりでございまして、当然、二%の物価安定目標を達成する中で、雇用とかその他、健全な国民経済の発展に資しているかどうかということは当然検証していく必要があると思いますが、現時点で、まだ消費者物価指数がマイナスを示している状況で、やはりこの二%の物価安定目標を達成するということを最大の目標として、その実現に向けて邁進するということが一番現時点では重要だというふうに思っております。

○中西健治君 我々は、日銀法を改正して、日銀は物価だけでなくて実体経済にも強く配慮を行っていくべきだというふうに考えておりますので、申し上げたとおりレジームチェンジですから、今はそうしたことを是非お考えいただける新総裁に就任していただきたいなというふうに私自身は思っております。

 責任の取り方についてお伺いさせていただきます。

 衆議院での質疑では黒田さんは、総裁の解任権が規定されているニュージーランドとは異なって、金融政策を総裁一人で決めるわけではなくて委員会で決定するわけだから説明責任を果たせばよいと、このような趣旨の発言をされておりますけれども、それでは総裁と一審議委員の責任は同等で大差がない、言わば連帯責任ということになってしまいます。

 これは民間会社との対比でいうと、取締役会は多数決だから取締役会で決議されたことをやっていればよくて、業績が達成できなくてもトップである社長は身の処し方を考える必要がないと、こういうふうにも解釈できるということになります。

 そのような覚悟で総裁の座に着こうとされているのか、そうした身の処し方、覚悟について再度お伺いしたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 日本銀行の金融政策の決定は、御承知のように政策委員会で決められることになっておりまして、その九名のメンバーのうち三人は総裁と二人の副総裁で、そして六人が民間の政策審議委員ということになっておりまして、各人一票であるということは事実でございます。

 ただ、委員会方式で金融政策を決定しておりますFRBにしてもECBにしてもバンク・オブ・イングランドにしても、総裁の、あるいはFRBですと議長ですけれども、その責任、役割が全く同じであるということはないわけでして、特に、決められた政策の実現は組織が行って、その組織を代表し集約している人は総裁であり議長ですから、当然その役割もより高いということは事実だと思います。

 責任につきましては、私は、何度も申し上げておりますけれども、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということは最大の使命であると思っておりまして、総裁に任命されましたならば、それを一日も早く実現すべく最大限の努力を払っていくという所存でございまして、必ずや実現するというつもりでおります。

 説明責任等につきましては、当然、日本銀行法の定めるとおりにきちっと果たしていきたいというふうに思っております。

 何度も申し上げて恐縮ですが、二%の物価安定目標の実現ということは日本銀行総裁に課された最大の使命であると、それを果たさなければならないし、私は任命されましたならば必ず果たす所存でございます。

○中西健治君 必ず果たす所存という、その意気込みはよしというところだと思いますが、やはり目標達成責任については総裁及び副総裁、執行部が特別の責任を負っているということだと思いますから、そしてそれに結果が伴わないということになった場合にはやはり身の処し方を考える、そんな覚悟を伺いたかったなというふうに私自身は思っております。

 次に、日銀法三条で規定されています日銀の自主性について、これは目標の独立性と手段の独立性との両方を併せ持っているという解釈をされていらっしゃるでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 日本銀行法の解釈としては、恐らく、「通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」ということでありますので、その通貨及び金融の調節についての理念を第二条でうたっておりまして、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とされておりますので、そういうことになろうかと思いますが。

 ただ、物価に対する、物価安定の責任、責務は日本銀行にあることは間違いないわけですが、物価の状況は経済全体に影響を与えますし、経済全体がまた物価に影響を与えるという意味では、政府の経済政策全体と十分な調整、連携が必要であるということは間違いないわけでございまして、日本銀行法の第四条でその旨がうたわれておりまして、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、」云々と、こういうふうになっているわけでございまして、二%の物価安定目標自体は日本銀行の政策委員会が決定したわけでございますが、それに先立って日本銀行と政府と十分な意見の調整を行って、そして共同声明で二%の物価安定目標を達成するということを日本銀行がコミットしたということでございますので、そういう、その物価安定目標の設定について政府と日銀が十分意見を調整するということは適切であり望ましいことだと思いますけれども、決定自体は日本銀行の政策委員会で決められたというふうに認識しております。

○中西健治君 そうしますと、確認ですが、手段の独立性というのは当然中央銀行、日銀が持っていますと。政策目標の独立性というのは、結局調整はすると、最終的には中央銀行が決めるということですので、完全なる独立性というものでもないなと、そんなような理解ですか。

○参考人(黒田東彦君) そのとおりだと思います。

 つまり、物価安定目標につきましては、共同声明でまずうたわれて、そこで政府と日銀が十分な協議をして合意に達したということを踏まえて政策委員会で決定がなされた。もちろん、決定自体は政策委員会ですので、政策委員会の決定がなければ日本銀行の物価安定目標を早期に実現するということが難しくなってしまうわけですが、その意味では、現行日銀法の下で日本銀行が自主的に物価安定目標を決めたということはそのとおりでございますが、他方で、政府と十分連携を密にして協議をして共同声明で合意したということでございます。

○中西健治君 どうもありがとうございます。

 現行日銀法の立て付けの下では、手段について、政策目標の設定について独立性がないんだ、そんなようなことは読み取れないということなのかもしれませんが、多くの中央銀行、先進国の中央銀行を見てみますと、FRBのバーナンキ議長の発言でもありますとおり、中央銀行は政策手段の独立性のみを有すると考えている方が非常に多いということだと思いますので、やはり日銀法はそこら辺しっかり規定していかなきゃいけないのではないかと私自身は思っております。

 次に、デフレの原因についてお伺いしたいと思います。

 端的にこれはお伺いしたいと思うんですが、安倍総理は国会答弁でデフレは貨幣的現象であると自らの考えを明言しているわけでありますが、こうしたデフレ又はインフレは貨幣的現象であると考えているか否か、お聞かせください。

○参考人(黒田東彦君) 理論的なお話でございますのでやや理論的にお答えさせていただきますが、フリードマンの有名な著書以来、インフレーション、デフレーションは基本的に貨幣的な現象であるという意見が広く共有されていることは事実でございますが、これは一方で、その時々の物価上昇率、インフレあるいはデフレ自体が全て中央銀行の行為によって引き起こされたと言っているわけではないわけでして、過去十五年のデフレの歴史を見てみましても、バブルの崩壊後の銀行の不良債権処理の過程で、銀行がいわゆるディレバレッジングという形で資本の増強を図ったこととか、急速な円高が進み過ぎてそれが物価上昇率を引き下げる要因になったとか、あるいは一時的な、一次産品が下落したこともございますし、新興市場国の安いものがどしどし入ってくるようになったというようなこともありますし、いろいろな要素が重なっているわけでして、日本銀行が積極的にというか、デフレを悪化させたというようなことは、二〇〇〇年の量的緩和のプリマチュアな停止とか、それから二〇〇六年の、その後すぐサブプライムローンクライシスとかリーマン・ショックが起こったわけですので、二〇〇六年の金融の引締めというのが間違っていてデフレを悪化させたという、そういうような事象はございますけれども、十五年にわたって続いたデフレの原因が全て日本銀行の金融政策にあるということは言えないと思いますが、責任は日本銀行があるわけでして、デフレ的な要因が出てくれば、それだけより強い緩和をすることによってそのデフレの要因を中和しあるいは緩和し、二%程度の安定的な物価上昇を実現するということは、やはり中央銀行としての日本銀行の責任であって、責任が十分果たされていなかったということだと思います。

○中西健治君 全て中央銀行、日本銀行の作為、不作為の結果ではないということでありましたけれども、だとしますと、金融政策だけで二%の物価目標が達成できると、そういうふうに発言されていると思いますけれども、達成できると考えているという理解でよろしいんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 金融政策で二%の物価安定目標を達成できるというふうに思います。

 何度も申し上げますが、その物価上昇率自体にはいろいろな要因が重なっていますので、そういう要因が出てきたときにそれに対抗する措置をとっていくという形で日本銀行の責任を果たす、そして二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成すると。それは日本銀行の責務であり、できると思いますが、もちろん、政府の機動的な財政運営とか、中長期的に見た成長戦略の実現とか、そういうことも十分助けになるとは思いますけれども、だからといって日本銀行の責任、責務が阻却されることはないというふうに思います。

○中西健治君 ここまでは基本的な考え方をお伺いしました。

 これから今後の金融政策並びに政策決定会合の運営についてお伺いしたいと思うんですが、二%の物価目標達成、二年という期限は区切らないまでも、念頭に置いて達成していきたいということをおっしゃられたかと思いますけれども、二年というのは七百三十日ということであります。長いようでも非常に短い、政策を実現していくという点では、さきの震災の例を見るまでもなく、二年というのは非常に短いということなんではないかと思います。

 安倍政権はロケットスタートを切ったと胸を張っておりますけれども、政権同様、日銀も新体制の下で、四月三日、四日、ロケットスタートを切っていくおつもりがあるか、またそれ以上に、もう三月二十日に新体制が発足するのであれば、緊急会議などを開いて政策を大胆に打っていく、そうした気持ちを持っていらっしゃるか、お聞かせください。

○参考人(黒田東彦君) もとより、早急に具体的な金融緩和の措置を政策委員会で審議して決定したいと思っておりますけれども、具体的な日程、内容につきましては、私まだ日銀総裁になっておりませんので、具体的なことに触れることは難しいということを御理解いただきたいと思います。

○中西健治君 是非、総裁になられた場合には、スピード感を持つということが一番重要ということなんじゃないかと思いますので、そちらで取り組んでいただかないといけないというふうに思っております。

 国債の購入の増額ですとか長期化について何度も言及されておりますが、これまでのこれも延長線上の施策ということだとは思います。これまでの延長線上の施策ということであれば、当座預金の付利引下げということも考えられると思いますけれども、これについてはどのような御意見をお持ちでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) これにつきましては、実は御承知のように、日本だけでなくて米国でも欧州でも議論になっておりまして、一方で、中央銀行における預け金に対する利息を付けるということによって短期金融市場が機能しやすいというメリットがあるというふうに言われると同時に、他方で、それが言わば短期金利が実際にもうゼロになることを妨げていると。ですから、金融緩和をより進める上では障害になっているんじゃないかと。

 ゼロにするどころかマイナス金利を付けたらどうかという議論もあるぐらいでございまして、この点は賛否両論あるところでございますので、十分政策委員会で審議したいというふうには思っておりますけれども、今この場で付利をやめるとかマイナス金利を付けるというようなことを申し上げるような立場にはまだございません。

○中西健治君 幾つかちょっと提言をしたいと思うんですが、それについてどうお考えになるか、お聞かせください。

 購入する資産の対象として、インデックス債、仕組み債などに言及されておられます。これは市場にリスクプレミアムがある場合にそのプレミアムを解消する、市場のゆがみを取っていく、そういう趣旨のことだろうというふうに思いますけれども、こういった市場価格が不明瞭な資産をもし買い入れるということを進めていくのであれば、今の状況からすると、三月に中小企業円滑化法も終了します。その後、中小企業の資金繰りが苦しくなることも想定されるわけですから、仕組み債などを購入するぐらいなのであれば、銀行の中小企業向け債権を束ねて日銀が購入する、こんなことについて、今初めて提言を受けているかどうかは分かりませんけれども、今の考え、聞いたところの考えを教えてください。

○参考人(黒田東彦君) 今委員おっしゃったとおり、長期金利のベンチマークは長期国債の金利でございますが、その上にこのリスクプレミアムは乗っているわけですね。それは御指摘のとおりでございまして、そのリスクプレミアムが適切な幅よりも高過ぎるということであれば、そこを縮める工夫をしなければなりません。

 今御指摘の提案も検討に値すると思いますけれども、具体的にどういうような形でそれぞれのリスクプレミアムを縮めることができるのか、それはその市場の大きさにもよるわけで、御指摘のように、こういったものの市場は比較的小さいわけでして、そこで余りにも中央銀行が大きなシェアを占めますと、マーケットの自由な価格付け、値付けが難しくなってくるという面もございますので、御提案も含めて、様々なリスクプレミアムを行き過ぎて拡大している分についてはどうやって縮めていくかということは十分検討していきたいと思っております。

○中西健治君 是非御検討いただきたいというふうに思います。

 もう一つ、これはリスクプレミアムということではないんですが、この財政ファイナンスと見られることに関連してということなんですが、金融調節の手段、これは今までは現物資産の売買ばかりが行われているということでありますけれども、国債の購入額を増やすのも結構ですけれども、財政ファイナンスとの批判をできれば回避する、そしてかつ直接的に金利市場に影響を与える手段として金利スワップで固定金利を受けるということが可能であります。そして、金利低下を促すことが可能です。

 財務官をやられていたときに法改正されて、財務省がスワップをできるようになったというようなこともありますのでお詳しいと思いますが、円の金利スワップ市場は、ドルもそうですが、非常に規模も大きいということもありますので、国債ファイナンスとみなされないような形で金利市場に直接影響を与えていくこの金利スワップの活用について、これも今現在のイニシャルのソートということで考え方を教えてください。

○参考人(黒田東彦君) 御提案の趣旨は十分承りました。

 具体的にスワップその他デリバティブ市場に出ていくのが良いのか良くないのか、いろんな議論があるところだと思いますので、十分御提案を伺いましたので、検討させていただきたいと思います。

○中西健治君 もう一つ、物価目標の指標ですけれども、今、消費者物価指数総合というものが使われていますが、それですと、円安によってエネルギー価格が上がる、食料品価格が上がる、それで自動的に物価目標が達成されかねないと、こんなような危険性もはらんでいるということになります。ですので、この変動率の高いエネルギー価格と食料品を除いた消費者物価指数、エクスクルーディング・フード・アンド・エナジー、これを用いるべきではないかと、こういうような見方があります。

 それについての見方と、それから国民生活上何といっても重要なのは、物価が上がった際に賃金が上昇するかどうかということだと思います。あわせて、厚労省が月次で公表している賃金データなど、これに限るということではありませんけれども、これもやはり指標として見ていく、加えていく、こうしたお考えはないでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 物価安定目標を設定する場合の具体的な物価指数の選択につきましては、御指摘のような議論が欧米でも広く行われておりまして、御承知のように、米国のFRBは、基本的には食料品とかエネルギーを除いたいわゆるコア物価指数といいますか、日本で言うとコアコアということになるんでしょうけれども、そういうものを使っておりますし、他方でECBなどは普通の総合物価指数を使っておりまして、エネルギー価格が上昇した場合の物価に与える影響はもちろん考慮はしますけれども、物価安定目標の指数としては総合物価指数を見ているわけでございます。

 この点は議論の余地はあるとは思いますけれども、現時点ではやはり今の総合物価指数、生鮮食料品を除いたところで見るということはできると思いますけれども、エネルギーを除いたところでというのは、エネルギー価格が変化しますと、日本はエネルギーのほとんどを輸入しているわけですので、それがほかの価格に影響し、さらには国民生活にも影響が出てくるという観点からは、エネルギー価格を除いてしまうというのはいかがかという議論もございます。

 したがいまして、私は、基本的には、現在日本銀行が見ております総合消費者物価指数を見ていくということでいいと思いますが、委員御指摘のとおり、一時的な例えばエネルギー価格の上昇によって価格が上がるとか、あるいは一時的な下落によって下がるといったようなことは十分割り引いて見ていかなくちゃいけないということは御指摘のとおりだと思います。

 賃金につきましては、当然、その他様々な経済指標とともに日本銀行は十分注視していくことになると思いますが、あくまでも物価安定目標自体はやはり総合消費者物価指数をターゲットにして物価の安定を図っていくということになると思います。

○中西健治君 衆議院の質疑においても、消費者物価指数が高めに出やすいというようなことを黒田さん自身おっしゃったと思います。デフレーターを念頭に置いていたと思いますけれども、やはりそうした点をしっかり加味してもらわないといけないだろうというふうに思います。

 最後に、日銀総裁としてのマーケットに対する姿勢という点についてお聞きしたいと思います。

 二〇〇二年に海外の格付会社によって日本国債は格下げをされました。そのとき財務官であられた黒田さんは、ムーディーズ社に対して三度にわたって財務省書簡というものを出しております。そして定量的根拠を示せと執拗に強く迫ったということでありますけれども、元々ソブリンの格付などは定性的なものでしかあり得ないので、政府がどれだけの意思を示すかということでもう決まってくると、向こうのムーディーズの論点もそれに尽きていたというふうに思いますけれども、あそこまで財務官書簡を出して執拗に抗議を行う、指導を行うというのは、私は当時一民間人でありましたけれども、どうやらこの指導を行おうとする姿勢、しようとする姿勢というのは、大きな政府で、父親のように民間を指導して率いようとする大役人的な感覚がにじみ出ているんじゃないかなというふうに感じられたわけでございます。日銀総裁の重要な責務というのは市場とのコミュニケーションであることは言うまでもないことでありますけれども、それは指導といった種類のものでは決してないんだと思います。

 この日銀総裁にもし就任した際には、財務官時代と比して、御本人としては何かを変えていかなきゃいけないですとか、心掛けていかなきゃいけない、こうしたことがおありなのか、それとも全く変えないでいい、こういうふうにお考えなのか、お聞かせください。

○参考人(黒田東彦君) 当然、日本銀行総裁に任命されましたならば、市場との対話、コミュニケーションというのを強化していかなければならないと思っております。

 当然、市場との対話ですから、日本銀行が何か市場に対して指導するとか、何かの規制をするというようなことでは全くありませんで、市場はまさに自由に動くことで市場の役割を果たしているわけでございます。したがいまして、市場の意見を聞く、あるいは日本銀行として取っている金融政策の考え方を説明するということは必要だと思いますが、指導するというようなことは全く考えておりません。

○中西健治君 私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○長谷川岳君 自由民主党選出の長谷川岳です。

 まずは最初に、本日は三月十一日です。東日本大震災より二年がたちますが、自民党も震災復興の加速化に向けて全力を尽くしておるところでございます。社会を構成する一員であります日銀総裁の候補として、また黒田さん個人として、震災復興にどう向き合い、取り組むおつもりなのかを、まず決意を伺いたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 委員御指摘のとおり、二年前に大震災が起こりまして、その直後、当然、日本銀行としてあらゆる可能な対応措置をとったというふうに思っておりますが、いまだ復興が完全に実現したわけではないわけですので、当然のことながら、被災地その他経済にまだ傷跡が残っているということは事実でございますので、日本銀行といたしましても当然そういうものに対する十分な対応を考えていかなければならないと。

 何よりも、先ほども申し上げましたが、日本銀行は日本全国に支店、出張所のネットワークを張り巡らせておりますので、そこから入ってくる情報を十分注視して、金融政策の決定に役立てなければならないと。また、逆に言いますと、決まった金融政策を実施する上で支店や出張所が最大の努力をしていかなければならないというふうに思っております。

○長谷川岳君 是非、顔の見える日銀として機能を果たしていただきたいと、そのように思います。

 早速ではございますが、黒田候補につきましては筋を曲げない頑固者であるとか、あるいはしんの通った人間と、そのような評され方をしておりますが、御就任された場合、先ほどみんなの党の中西議員の意見もありましたが、一方では、この頑固さを是非とも通してほしい、そういう意見もたくさんございます。頑固さを日銀総裁としてどのように強みとして生かされるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 中央銀行総裁の役割というのはどこの国でもある意味で似ている面がありまして、それは中長期的な観点から物価の安定と金融システムの安定ということを最大の使命として日々の金融政策を実現していくということに尽きると思いますが、物価の安定につきましては、私自身、二%程度の物価安定目標というのはグローバルスタンダードになっておりますし、日本銀行にとっても必要なことだと思っておりますので、総裁に任命されましたら、その一日も早い実現に向けて最大限の努力をするということになろうかと思います。

 金融システムの安定ということにつきましても、十分な注意を払って、かつての金融システムの大きな問題あるいは欧米が最近経験したような大きな問題、そういうものを何としても回避していくと。

 その二つにつきましては、私は、他の中央銀行総裁と全く同様に、一貫して筋を通していかなければならないというふうに思っております。

○長谷川岳君 物価の安定、そして金融システムの安定というふうなお話をお聞かせいただきましたけれども、特に日本の今のデフレ状態は、これは物価の安定と言えるのか、それとも物価の安定から逸脱をしているのか、どのようにお考えですか。

○参考人(黒田東彦君) 私は、明らかに物価の安定から逸脱しているというふうに思います。

 物価の安定と申しますのは、多くの中央銀行がそうしておりますように、二%程度緩やかに消費者物価が上昇していくというのが物価の安定でございまして、なぜかといいますと、消費者物価指数というのはどうしても、新製品その他が入らないということもありまして、〇・五%から一%ぐらいは過大に出てくると。ですから、一%上がっていても実際はほとんど上がっていないということだと思います。

 それからもう一つは、これも多くの中央銀行がそういう考えでございますけれども、一%程度ののり代といいますか、そういうものがないと、物価が下落し始めたあるいは景気が落ち込み始めたというときに、短期金利を操作して下げていくとすぐゼロに行ってしまって、量的緩和というやや異質の金融緩和政策を取らざるを得なくなってくる。短期金利の上下で金融政策を行うというのが一番伝統的でかつスムーズなわけでございますので、そういうことが維持できるように、やはり二%程度の消費者物価上昇というのが物価安定として一番望ましい状況であるということがほぼグローバルなスタンダードになっているというふうに思いますので、十五年間にわたって、二〇〇八年の一次産品の世界的な急騰のときを除けば、基本的に消費者物価が毎年毎年下落するということは明らかに物価安定ではなくてデフレであり、それが日本経済の劣化につながってきたというふうに思っております。

○長谷川岳君 次に、アベノミクスについてお伺いします。

 アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三つを基本方針としておりまして、安倍総理はそれを三本の矢と表現しております。

 そこで、お尋ねをしたいんですが、このアベノミクスと呼ばれる経済政策について、どのように評価をされますか。

○参考人(黒田東彦君) 当面、デフレが続いております事態を一日も早く是正してデフレから脱却するということが何よりも重要なわけですが、その際、所信でも申し上げましたとおり、デフレギャップを縮めて実需をつくっていくという財政政策の役割も持続的な経済成長を実現するという意味で重要ですし、特にデフレから脱却する局面で助けになることは事実でございます。

 更に言いますと、中期的にやはり、共同声明でも述べられているとおり、財政健全化に努める、財政再建を中期的に実現していくということも重要だと思いますし、より中長期的に言いますと、成長戦略を通して民間主導の経済成長を高めるというか、それは基本的に極めて重要だと思いますので、三つの組合せは適切だとは思いますが、ただ、日本銀行はこの金融政策について責任を負っており、二%の物価安定目標を達成することに責任を負っておりまして、ほかの二つにつきましては政府が責任を負っているというふうに認識しております。

○長谷川岳君 三つの基本方針のうち、日銀のフィールドに属すのは言うまでもなく大胆な金融政策でありますが、この大胆な金融政策の大胆なというのはどういうふうにとらえておりますか。

○参考人(黒田東彦君) 日本銀行はこれまでもいろいろな措置をとってきたことは事実なんですが、十五年続きのデフレということを是正できなかったという意味では明らかに不十分な金融緩和であったと。

 したがって、大胆なといいますのは、量的にも質的にも大胆な対応を取らなければならないと。単に量的にベースマネーを拡大するというだけでは、欧米の経験も示していますように、必ずしも十分ではない可能性がありますので、量的にも拡大しなければならないと思いますが、質的に、例えば国債についてどんどん長期のものを購入していって長期金利に対する影響を強めなければならないとか、あるいはベース、ベンチマークになっております長期国債の長期金利の上にリスクプレミアムで乗ってきます民間の長期金利その他についてもそれを引き下げると、リスクプレミアムが過大なところはそれを縮めるという努力が必要だと思います。そういう意味で、量的、質的に大胆な金融緩和を進めるということだと思います。

○長谷川岳君 質問と若干かぶりますけれども、これまでデフレ脱却を果たせていないその日銀の金融政策を厳しく批判されてきましたけれども、日銀はこれまで十分に責務を果たしていなかったという評価でしょうか。その候補として率直にお話をいただきたい、そのように思います。

○参考人(黒田東彦君) まさにそのとおりでありまして、十五年続きのデフレということは世界にも例がないわけでございまして、明らかに日本銀行法の定める物価安定の理念というか責務を果たしてこなかったということは否定できないと思います。

○長谷川岳君 デフレを解消するためにどのような手段が有効とお考えですか。先ほど言われたこともありますけれども、政府が考えている以上のことを実は考えている、そのようなことがありましたら述べていただきたいというふうに思います。

○参考人(黒田東彦君) 定性的には、先ほど申し上げましたとおり、国債、より長期のものを大胆に購入していくということが必要だと思いますし、その他のリスクプレミアムが高過ぎてその市場が十分機能していないというところについてはそういうリスク資産の購入も考えていくということになると思いますが、具体的に何をどのようにするかということについては、これは当然ですけれども、市場に対する影響とか経済の動向を踏まえて政策委員会で議論をして決めていくことになると思います。

○長谷川岳君 考えているかどうかはいかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 当然、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するために必要な措置はあらゆる措置を考えていくということになると思います。

○長谷川岳君 物価目標達成には日銀による思い切った資金供給が必要ではないかというふうに思いますが、もう一つ、もう一度伺いますが、具体的に資金供給の手段というものについて伺いたいと、そのように思います。

○参考人(黒田東彦君) これも欧米の中央銀行もやっていることですが、中央銀行のバランスシートで、負債側のところに中央銀行券と銀行の中央銀行預け金があるわけでして、資産側には様々な資産があり得るということでございます。

 したがいまして、通常、量的緩和といいますと、バランスシートを拡大して、典型的にはベースマネーを拡大していくことによって金融緩和を実現し、流動性が非常に大きくなりますので、その一部が株式市場とかその他の資産市場に行く、あるいは直接的に投資に代替していくとか、いろいろな効果があろうということでございますが、日本を見ましても欧米を見ましても、必ずしもそれだけで十分かというと、資産側の資産の中身もやはり重要で、例えば、典型的に言いますと、政府短期証券をどんどん買っていけば確かに負債側のベースマネーは増えますけれども、政府短期証券の金利はほとんどゼロに近くて、ほとんどゼロの資産とこの日銀の負債、まあ預け金には〇・一%の付利がされていますけれども、ほとんど日銀券はゼロの金利ですし、ゼロの金利の資産とゼロの金利の負債とを交換してみても、量的には緩和した形になって一定の影響は期待できますけれども、やはりこの資産の中身についてもっと長期の金融資産、典型的には国債を購入していくことによって長期金利に影響を与える、あるいはリスク資産を購入することによってリスクプレミアムに影響を与えるといったこの資産側の中身についても考えていかなければならない。ですから、量的な緩和、量的な日銀のバランスシートの拡大ということは重要で必要だと思いますけれども、その際にも質的な緩和も考えていく必要があろうと思います。

○長谷川岳君 二〇一四年から始まる期限を定めずに毎月二兆円の長期国債を買う無期限緩和を前倒しする、あるいは長期国債の買入れ額の増額というのはお考えということでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 当然考えられることです。

○長谷川岳君 外国債券購入についてはどのようにお考えですか。

○参考人(黒田東彦君) 外債の購入につきましては、為替に対する影響を当然考慮されなければならないわけですし、介入ということになりますと、G7の数十年にわたる合意事項がありまして、御承知のように、G7諸国としては為替レートは基本的に市場に任せる、ペッグしたりレンジを作ったり、そういうことはしないと。ただ、行き過ぎた、ファンダメンタルから見てどう見ても行き過ぎているという状況があった場合には、単独であるいは協調して介入するということもあり得ると。いずれにせよ、為替の動向は注視していくというのがG7の合意事項ですし、まあ最近のG20でも似たようなことが言われておりまして、いずれにせよ、為替の安定は政府の責任で、中央銀行としての日銀としてはそういうことは責務に入っていない、物価の安定が責務であると。したがって、今、外債を購入するというようなことを検討する必要はないというふうに思っております。

○長谷川岳君 資金供給以外に、金融機関が日銀に預けている当座預金の金利を撤廃することについてはいかがお考えですか。

○参考人(黒田東彦君) これも欧米でもいろいろ議論されておりまして、それを付利することが短期金融市場の機能を維持する意味で重要だという意見、逆に言うと、いわゆる出口戦略としてそういうものがあると、出口のときに一気に大量の資産を売るという形ではなくて、バランスシートは維持したまま付利の金利を上げていって、短期金利をだんだん上げていって、金融緩和から徐々にエグジットしていくという意味で重要だという説もありますし、他方で、この中央銀行への預け金に付利していることが短期金利のフロアになってしまいまして、短期金利がそれ以上下がらないというのは問題だと。

 ですから、付利はやめてゼロにするとか、あるいは、むしろマイナス金利を付けろという議論さえ欧米ではあるわけでして、賛否両論があるところでございまして、現時点で直ちに付利をやめるとかマイナス金利を付けるとかそういうことは考えておりませんが、十分議論されるべきだと思います。

○長谷川岳君 安倍政権の金融政策はスピード感を大切にしておりますけれども、新体制発足後の初の金融政策決定会合はどう臨まれるおつもりですか。

○参考人(黒田東彦君) スピード感は非常に重要だと思います。ただ、まだ日銀総裁に就任していない段階で、最初の金融政策決定会合で何をどのようにするかということは申し上げる状況にないということを御理解いただきたいと思います。

○長谷川岳君 私は、デフレに苦しめられている今の日本の経済の状況を考えますと、日銀は独立性を保ちながら、やはり政府と方向性を一致させるということが私は今の日銀に求められているというふうに考えております。その独立性と私は方向性というのは基本的に別のものだと、そのように考えておりますが、いかがですか。

○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、現在の、一九九八年に改定され、改正法が施行されました日本銀行法の三条で、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」とうたいまして、四条で、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」ということでありまして、今回の共同声明でも、二%の物価安定目標ということは政府と日銀が十分協議して、日銀の自主的な決定で行われたというふうに理解しております。

○長谷川岳君 黒田候補は通貨マフィアと言われておりますけれども、これから国際金融界との協調についてはどのようにお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 私、たしか一九九九年から二〇〇三年まで財務省の財務官というのを務めまして、いわゆるG7の財務デピュティーたちと毎月のように会って、国際金融の問題を協議してきたことは事実でございます。

 ただ、そこから離れてもう十年たちまして、基本的にこの八年間はアジア開発銀行の総裁として様々な人と接してまいりましたので、いわゆる通貨マフィアと言われている立場とはもう異にしておりますけれども、ただ、そのときに知り合いになったドラギECB総裁とかマービン・キング・イングランド銀行総裁とかよく存じ上げていますし、バーナンキ議長とも何度かお会いしたことがございまして、そういった意味では、中央銀行間の連絡、協調というものが非常に重要になっている現在、そういった人的なネットワークというものが活用できるのではないかというふうには思っておりますが、あくまでも、日本銀行総裁に任命されましたならば、日本の経済を踏まえて適切な金融政策、具体的には二%の物価安定目標を早期に達成するということに向けて邁進するということが最大の課題、使命であるというふうに思っておりますので、何か、特に元通貨マフィアとして何か行動するということはないと思います。

○長谷川岳君 これで質問を終わります。ありがとうございました。

○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。

 黒田参考人、先週の衆議院、また本日の参議院の所信の表明と、そして質疑への御対応、本当に、民間の立場でまだありますので、二日間も私たちのために時間を取っていただきまして、本当にありがとうございます。

 本日も、三時間超という長丁場で、そしてもう一時間半経過をして、ずっと一人で御対応していただいておりますが、私の質問が終わりましたら短時間休憩があるようですので、いましばらくお付き合いをいただきたいというふうに思います。

 黒田参考人の所信の中で、デフレ脱却に向けてやれることは何でもやる、また市場との対話を重視するという御姿勢が明らかにされました。私は、これに非常に共感を覚えました。この御姿勢を強く支持したいと思います。総裁になられたときには、これを言葉どおり是非実行していっていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 まず最初に、お聞きいたします。

 本年一月、政府と日銀の共同声明で、物価安定目標二%、これが宣言をされましたけれども、デフレに長らく日本が苦しんできたこの状況にあって、このデフレ脱却というのは安倍政権においても至上命題であるというふうに私も思っております。

 一方で、実はこのデフレ脱却がそれほど大きな意味を持たないという意見も持っている経済学者もいると理解をしております。インフレもデフレも経済には中立であると、物価が下がれば、賃金も下がっているけれども、収入と支出が同じように連動すれば中立であるという、そういう考え方であると思いますが、私はそう思っておりません。

 これは、債務が存在しているということと、支出が下方硬直的であって、収入が低下をしたときに支出もそれに連動して低下をするという形にならないので、デフレというのはやはり悪いものであるというふうに私は思っております。

 改めて、黒田参考人にこのデフレ脱却の意義ということをお伺いしたいというふうに思います。

○参考人(黒田東彦君) 委員御指摘のとおり、デフレの経済に対する悪影響につきましては一般的に広く認識されておるところでございますが、他方で、一部に物価、賃金という名目値は長期的に見れば経済成長とか失業とかにそれほど影響がないんじゃないかという意見もあることは事実でございます。

 ただ、この十五年にわたる日本のデフレが日本経済の劣化に拍車を掛けたということについては、恐らく欧米のエコノミストはほとんど全て意見が一致していると思いますし、日本のエコノミストもかなりの人がそういう意見だと思います。

 その大きな理由は、一つは、デフレというのは物価がずっと下がっていくということでございますので、家計も企業も今慌てて支出するよりも価格が下がってから支出した方がいいという形になって、どうしても支出が先送り、繰延べになっていくということがございます。それがまたデフレに影響してくるという悪循環になってくるわけですよね。そういうデフレの中では実体経済も影響を受けてしまうということでございます。

 もう一つは、委員御指摘のとおり、債務でございまして、これは一九三〇年代の世界不況のときに広く議論されたことでございまして、世界的にデフレで物価が下がったわけでございます。その結果、債務者の実質債務が言わば膨れ上がってしまいまして、企業の倒産とか家計の破産、そして政府の債務の膨脹といったことが起こったわけでございまして、日本の場合も同様に、政府についても家計についても企業についても債務者は実質債務が拡大してしまっていろいろな問題を引き起こしているということで、やはりデフレがこの十五年にわたって日本経済にマイナスの影響を与えたということは間違いないと思います。

○竹谷とし子君 ありがとうございます。

 次に、物価目標と雇用の改善との関係についてお伺いいたします。

 これは、物価目標を達成できたとしても、国民の所得、とりわけ賃金、これが上がらなければ経済は良くなったと言えないと思います。資本からの所得が上がったとしても、それは一部の人でありますので、労働からの所得が上がるということが必須であると思いますけれども、物価目標の達成がどのようにして雇用の増加、賃金の上昇、これに結び付いて関連していくというふうに想定をされているのか、お考えをお聞かせいただければと思います。

○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げましたとおり、十五年続きのデフレが日本経済にマイナスの影響を与えたということは事実でございますので、逆に言いますとデフレから脱却するということは日本経済にとってもプラスであると思います。ただ、委員御指摘のとおり、実際に雇用や賃金が改善しなければ一般の人の生活水準は改善しないわけでございまして、雇用や賃金がどのように展開していくかということは十分注視していかなければならないと思います。

 過去の傾向でいいますと、物価よりも賃金の方がやや硬直的ですので、物価がどんどん下がっていった後も賃金が下がるまでには一定のラグがありまして、その間、逆に実質賃金が上がったと、あるいは雇用が大きく減ったというような事態はございましたが、十五年続いてみると、結局のところ物価も賃金も下がり雇用もなかなか回復しないということになっておりまして、逆に言いますと、物価が先に上がるか賃金が先に上がるかという議論はありますけれども、そういった状況をもちろんよく見ていかなければならないと思いますが、雇用や賃金が上がらなければ結局のところ生活水準は上がりませんので、そこは十分見ていかなくちゃいけないと思いますが、基本的にデフレから脱却して物価が二%程度上昇する安定的な持続的な経済の展開の中で、基本的に賃金や雇用も改善すると思いますけれども、ただその点の御懸念というのは十分理解できるところでありまして、当然雇用や賃金の問題につきましては政府とともに日本銀行も十分配慮していかなければならないというふうに思っております。

○竹谷とし子君 賃金の話なんですけれども、国税庁が出している民間の賃金所得者の統計を見たところ、約十年か十一年の間に一〇%程度下がっているという、そういう統計がありました。

 これは、物価以上に下がったのではないかというふうに思いました。物価が上がったときに必ずしも賃金が連動しないとも思いますし、物価以上にこの過去十五年のデフレの中で賃金が下落をしたということについて、いろんな要因があるのだというふうにも思いますけれども、黒田参考人の率直なお考え、分析をいただければというふうに思います。

○参考人(黒田東彦君) 実は、この問題は日本だけではなくてアジア全域、そして欧米でも同じ問題が議論をされておりまして、実質賃金が、アメリカやヨーロッパは日本と違ってデフレでなくて、しかも成長も特に米国は比較的順調なわけですけれども、そうした中で実質賃金、特に平均的な実質賃金が余り上がっていないという問題は大きな議論になっております。

 それから、アジアの諸国の中では、中国やインド、インドネシア、皆高い成長をしていますが、実はその所得分配がどんどんどんどん不平等になって、言わば、実質賃金はもちろん上がってはいるんですけれども、資産所得者の所得の上昇の方がはるかに大きいために不平等度がどんどん増しているということになっておりまして、日本もこういった世界的なトレンドの中にあって影響が出ていることは事実だと思います。

 それが、グローバライゼーションによるという説もありますし、最近の技術の、ロボットとかITCの、様々な技術革新の影響だと言う人もおりますし、いろいろなことが言われておりますけれども、日本の場合は、やはり長く続いたデフレ、その中で雇用が必ずしも良くならない、物価も下がる、賃金も下がるという中で起こったことだと思いますので、デフレから脱却することによって持続的な経済成長に資するということになり、賃金や雇用も基本的には改善していく方向にあると思いますけれども、委員の御懸念のように、必ずしも一対一でぴったり対応しているわけではございませんので、その辺りはやはり政府、日銀として十分注視して必要な対応策を取っていくと。特に、雇用の問題になっていきますと政府の責任というのが非常に大きいと思いますので、そこは十分配慮していかなければならないというふうに思っております。

○竹谷とし子君 率直な御意見をいただきまして、ありがとうございました。この雇用というのが本当に一番重要なものだというふうに私は思っております。

 そこで、中央銀行に、日銀に雇用の責任も持たせるべきであるという、そういう意見もあるというふうに理解をしておりますが、私自身はそこについてまだ自分の見解を持ち合わせておりませんが、黒田参考人はどのようにお考えになりますでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 御指摘のように、中央銀行に雇用の責任も果たしてもらうべきだという意見があることは承知しております。

 具体的には、実際、FRBは、米国の中央銀行は物価の安定と雇用の最大化という二つの使命を帯びている、もちろん金融システムの安定というのは当然なんですけれども、マクロ経済についていいますと物価の安定と雇用の極大化、最大化という二つの使命を課されているというわけでございます。これは米国の中央銀行だけでございまして、ほかの国の中央銀行は全て基本的に物価の安定が最大の使命で、もちろん金融システムの安定も必要だと、こういうことになっております。

 この議論は非常に難しい面もあると思いますが、実際、日本銀行法では、御承知のように、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」となっておりますので、物価の安定が最大の使命であることは変わらないんですけれども、その際、雇用とかその他を全く無視してやっていいということではもちろんないわけでして、雇用の状況その他、国民経済が健全に発展するような状況にあるかどうかということは日本銀行としても十分配慮しなければならないと思いますけれども、あくまでもそれは物価の安定を通じてそういうものに資するということだと思いますので、現在の日本銀行法ではそういうふうになっており、これはある意味でいうとFRB以外のほとんど全ての中央銀行がそういうことになっておりまして、仮に総裁に任命されましたら、当然のことですけど、現行の法律に従って物価の安定に邁進するということになると思います。ただ、これは非常に議論のあるところでございます。

○竹谷とし子君 雇用に注視をしていくというお話、先ほどもありました。物価の安定、これが至上命題であるということは認識をしておりますけれども、政府と連携をしながら、この雇用の安定、賃金の上昇、これについても是非総裁になられた暁にはますます注視をしていっていただきたいというふうに思います。

 次に、中小零細企業、個人事業主についてお考えを伺いたいと思いますけれども、日本の企業の中で中小零細が九割以上を占めるということは多くの方が認識をされている事実でありますけれども、とにかくお金が回ってこないと、私も何社も毎日毎日回らせていただいてお話を伺っていますけれども、どうお金が回っていくようにすればいいかということで日夜悩んでおります。

 私も、両親が零細の町工場やっておりましたので、何でもかんでも助ければいいというわけではないというのも理解をしております。我が家は廃業いたしましたので、一度、子供心にもしようがないかなというような、そういう状況もありましたので、ずっと銀行がお金を貸し続けてもっと借金が膨らんだ状態で悪くなるよりは良かったんじゃないかというふうに、今も思っております。

 ですので、何でもかんでもお金を貸せばいいということではないというふうに理解をした上でお話を伺いたいんですけれども、最近、日本銀行が貸付けの増額分、民間の銀行で貸付けを増額したらその分低利で長期で日銀から銀行に貸出しをするという、そういう制度をつくられました。私、これ、すごくいいというふうに思っております。

 もちろん、政府の財政政策や規制緩和などで中小企業や零細企業、また個人事業主の方が起業がしやすいように、新しい事業を展開しやすいようにするという、後押しをするということも必要ですけれども、やはり一番大事なのは、民間の銀行がきちんと目利きの役割を持って地域の企業を育てていくということが大切だと思いますので、そちらの方に向かわせるためにも、これ非常に重要だと思います。

 銀行の状況を見ていましても、やはりバブル経済が崩壊してから銀行の方々が多くを費やしている業務というのが債権の回収であったというふうに思います。新規のビジネスを育ててそこにお金を貸していくということよりも過去の債権を回収する、回収される方は本当に資産も失う、売上げも減少させて、デフレ状態でありますので、その債務を返済するのに大変な状況という、そういう悪循環があったというふうに思いますが、この中小零細、また個人事業主、いい取組をされようとしている方もたくさんいらっしゃると思います。そこにお金が回っていくようにするにはどのようにしたらいいかということについて、お考えを伺いたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 日本の場合もそうですが、多くの国の場合も、実際に雇用という面でいいますと、中小企業の役割は非常に大きいわけです。さらには、様々なイノベーションという意味でも中小企業の役割が大きいわけでして、中小企業がいろいろな経済の、景気循環その他の中でうまく対応して伸びていくということが経済の健全かつ持続的な発展に非常にプラスになるということは、そのとおりでございます。

 したがいまして、当然、日本銀行としても、どのようにして中小企業に必要な資金が回っていくかということを考えていかなければならないわけですが、大企業の場合は、銀行からの借入れだけでなくて、あるいはそれよりも資本市場で債券を発行したり株を発行したりして資金を調達するということが大きくなっていますので、銀行の役割は小さくなっていますけれども、中小企業の場合はほとんど金融機関に依存するという形になっておりますので、中小企業に資金が回っていくようにするためにはどうしても銀行が中小企業に資金を回す必要があるわけでして、それをどのように確保していくかということは、政府にとっても中央銀行にとっても重要な課題でございます。

 御指摘のような仕組みをつくって日銀が銀行の貸出しを増やそうとしていることは事実なんですが、最近少し増えていますけれども、基本的に貸出しは低迷しているということでございますので、何度も申し上げますが、日本銀行は全国に支店、出張所を張り巡らせておりますので、そこを活用して、特に地域の中小企業がどのような資金繰りであり、そこにどういう手だてを取れば資金がよく回っていって中小企業の発展に資するかということは、金融政策の効果を高める上でも重要だと思いますので、十分検討していきたいというふうに思います。

○竹谷とし子君 今、支店や出張所、全国に張り巡らされているというお話がありましたけれども、是非私は、総裁になられましたら、総裁始め、本店、支店、出張所の方々が、形式的な会議の場で意見を伺うということも必要ですけれども、現場に是非どんどん入っていただいて、生の中小零細事業を営んでいる方、そして労働している方々の話を聞いていっていただきたいというふうに切にお願いをいたします。現場で聞くお話は本当に貴重だというふうに思います。また、逆に教えられることの方がたくさんあるというふうに私自身も感じ、常に現場に現場にと足を運んでいる状況でございます。

 次に、被災地の復旧復興のことについて伺いたいと思いますが、本日、三月十一日、二年目の震災の日を迎えます。昨日、公明党では、仙台で、被災地の宮城、福島、岩手の議員と被災地復興支援担当議員ということで全国の議員が集まりまして、被災地復興のための会議を行いました。そして、その後、石巻の「がんばろう!石巻」の看板の前で献花をし、そしてその後、牡鹿半島の奥の方の入り組んだ、カキの養殖をやっていらっしゃる方々の六次化に挑もうという方々のお話を伺ってきたわけでありますけれども、やはり、これから復旧復興、これからが正念場であるというふうに思います。現地の方々は、足を運んでくださる方が少なくなってきたというふうにおっしゃられています。

 是非日銀も、日銀も株式会社だったというふうに思いますけれども、民間の企業の方々でボランティアをされたり、復興支援の活動をずっと続けられていらっしゃる方々もたくさんいますので、是非、日本銀行も総裁を筆頭に現地にどんどん行っていただいて、ボランティアなり復興支援の顔の見える支援というものをしていただきたいというふうに思います。

 被災地の復旧復興のための御姿勢、御決意、伺えればというふうに思います。

○参考人(黒田東彦君) 私自身、ちょうど東日本大震災が起こりましたときはマニラにいましたけれども、その少し後、東京に参りまして、それは、一つは、アジア開発銀行の職員の方が、特に日本人職員の方が内部で義援金を募りまして、それを日本赤十字にお渡しするということを日本政府の人にお伝えしたと。具体的には、当時の野田財務大臣にお会いしまして、アジア開発銀行として職員がそういうことをしていますと。

 それから、アジア開発銀行としては、日本やアメリカやヨーロッパ、もちろん株主ですけれども、先進国に支援するということはできないわけです。ただ、アジア開発銀行はスマトラの大津波とかカシミールの大地震とか、そういう被災地の復興の支援をしておりまして、そういう復興支援の経験をシェアすることはできます、もし特に被災地の方で復興支援について経験を知りたいということがあればいつでも対応しますということも申し上げ、実際に一部の方がお見えになってADBの経験をお伝えしたこともございます。

 いずれにいたしましても、日本銀行としても、大震災があった直後に必要な日銀券の供給とかその他緊急の対応は十分されたと思いますが、御指摘のように復興はまだ半ばでございまして、まだ時間が掛かるわけでございます。復興というときには、インフラの整備とか住宅の復興とかいうこともございますが、やはり働く機会というか、仕事、雇用、経済活動というものの支援というものが不可欠でございまして、その面では政府の役割がもう圧倒的に大きいわけですが、中央銀行としても資金が円滑に被災地に回るように心掛けなければならないと思っておりますので、御提案の趣旨は十分心に留めて、任命されましたら日銀総裁として対応していきたいと思います。

○竹谷とし子君 被災地の復興にしても、中小企業の現場にしても、顔出して話を聞いて、苦しんでいる方や困っている方や、額に汗して一生懸命働いている方、努力している方、そうした方々がどうすれば豊かになっていくかということを、国会議員も政府も日銀も知恵を出し合いながら、それぞれの役割、立場に応じて足りないところを補完し合いながらその達成のために進んでいくということが一番大事だと思いますので、任命されましたら是非その御姿勢でお願いしたいというふうに思います。

 私、今日は触れなかったんですけれども、日本の財政再建、先進国の中では突出した債務のGDP比率、これを、持続可能な社会経済を確立するためには、この見通し、どうしたら解消していくかということをきちっと考えていかなければいけないというふうに思っております。

 民間と政府の違いというのは、中央銀行を持っていることだというふうに私は思っております。これは地方と中央政府の違いでもあります。財政金融委員会に私入らせていただいておりますので、その辺のところももっとじっくりと、総裁になられた暁にはお話を伺っていきたい。今、まだ日本に体力がある今のうちにその手だてを考えていかなければいけない、そしてその第一歩がデフレ脱却だというふうに思っておりますので、それに向かって共々に、それぞれの立場で頑張らせていただきたいというふうに思います。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○委員長(岩城光英君) 暫時休憩いたします。

   午前十一時三分休憩

     ─────・─────

   午前十一時十分開会

○委員長(岩城光英君) ただいまから議院運営委員会を再開いたします。

 休憩前に引き続き、日本銀行総裁の任命同意に関する件を議題とし、質疑を行います。

 質疑のある方は順次御発言願います。

○尾立源幸君 民主党・新緑風会の尾立でございます。

 黒田参考人、お久しぶりでございます。ADBの総裁として八年間、本当にアジアの発展のために、また貧困の削減のために取り組まれたことには心からの敬意を表したいと思います。

 今回は同意人事の審査ということでお出ましをいただいております。私、やはり国会が同意するからには我々全ての議員がこれ責任を持たなきゃいけない。そういう意味で、いいことだけではなく、行け行けどんどんではなく、やはりネガティブな面もしっかりチェックさせていただかなきゃいけないと、そのように思っております。

 とりわけ、安倍総裁は、選挙の前後を通じて、物価目標二%を達成すれば何か全て世の中バラ色のようなことをおっしゃっているようにも聞こえるんですけれども、なかなかそういうわけにはいかないと思っております。

 一つは、この更なる量的緩和が長期国債の買入れという形で今お考えというふうには聞いておりますが、財政ファイナンスととらえられかねず、また国債の信認低下、ひいては金利の上昇、財政悪化を招くことを心配をしております。

 もう一方、国民生活の方から見ると、もういろんな方から質問がありましたが、このインフレが悪いインフレという形で現れた場合、賃金は上がらない、雇用も改善しない、ただただ物価が上がるというようなことになってはいけないと、そんな面から質疑をさせていただきたいと思いますが。

 まず、冒頭申し上げましたように、この二%を達成すれば全てがバラ色なんだということではないということについて、改めて黒田参考人の御意見、日銀と政府の役割というのをはっきり見識を示していただきたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) まさに委員御指摘のとおり、十五年続きのデフレから脱却し、二%の物価安定目標を達成するということが日本銀行に課せられた課題であり、使命であるというふうに思っておりますが、日本経済自体の抱える問題というのは様々ございまして、財政再建であるとか、あるいは構造改革であるとか、そして更に言えば、中長期的に望ましい成長を達成するという意味での政府の役割というのは極めて大きいわけでして、日本銀行の役割はあくまでも物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございますので、最大の使命は物価の安定でございますが、日本経済の健全な発展、成長にとって政府の果たす役割が極めて大きいと。

 日本銀行だけで何かそのような経済全体を健全に発展させるということは難しいと思いますが、何よりも、しかし、物価の安定を確保して日本経済の健全な成長に資するということは必要だと思っております。

○尾立源幸君 ありがとうございます。

 それでは、これも議論がもう既になされておるところでございますが、日銀の独立性というものについて改めて見解をお聞きしたいと思います。

 端的に言うと、今回、政府と共同声明という形で物価目標については合意をされた、そしてその実現手段としては独立で日銀が持つと、これがベストだというふうにお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 今回の共同声明は、確かに日本銀行と政府が十分協議をして、そして二%の物価安定目標についての合意ができたわけでございまして、それが共同声明という形で発表されたことは事実でございますが、あくまでもこれは現行の日銀法に沿って政策委員会が二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを決定したものでございますので、この点での日本銀行の独立性、自主性というものは法律で保障されたとおりに行われていると思います。

 ただ、同時に、日本銀行法の四条でも、政府との緊密な連携、特に「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、」云々ということがございますので、そういう日本銀行法の四条の趣旨に沿って十分政府と協議をして二%の物価安定目標で合意ができたということだと思いますが、物価安定目標自体、これを早期に実現するということ自体はあくまでも政策委員会で決定されたというものだというふうに理解しております。

○尾立源幸君 政策決定委員会で二%を決定したということでございますが、じゃ、選挙結果との関係について少しお話を聞きたいと思います。

 今回は、政治による圧力ではなく、民意が示された選挙結果を含めてこの政策決定委員会で決定をされたという理解でよろしいんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 選挙の結果云々については私から何か申し上げるのは控えさせていただきますが、現在の政府と日本銀行が十分協議をして二%の物価安定目標について合意ができて、それを政策委員会で正式に決定したということだと思いますので、現在の政府の考え方というものは、もちろん日本銀行として十分協議したわけですから承知しつつ自主的に決定したということだと思います。

○尾立源幸君 前任者というか、まだ辞められていないんですが、白川総裁も世界的には金融の分野でのすばらしい、卓越した方だと思うんですけれども、今ずっと黒田参考人のお話を聞いておりますと、世界標準では二%というのが常識ですよということをおっしゃっておりますが、なぜ、じゃ、その日本銀行、また総裁以下ですね、この二%というものの目標設定に対してかたくなに、かたくなに固辞をされたのか。今、民間人ですから、ざっくばらんに言っていただきたいと思いますし、また、なぜ、じゃ、それが豹変したのかと、この年末にですね、この点について御見識を御披露ください。

○参考人(黒田東彦君) 白川総裁がどういうお考えで政策を変えられたかというのは、私から申し上げるのは僣越だと思いますが、日本銀行は、この十五年にわたるデフレの中で様々な金融緩和の試みはやってきたわけですね。にもかかわらず、十五年続きの物価下落であったと。そういうことを踏まえて、現在の政府と十分な協議をして二%の物価安定目標を決められたということだと思いますが。

 一般的に、デフレが続きますと、デフレから脱却するのがますます難しくなってくるわけですね。デフレ心理というか、デフレ期待が市場に蔓延してきますので。ですから、デフレが続けば続くだけますます難しくなってくるという中で、やや慎重にというか、金融政策の運営が続いてきたと。これは、別に現在の総裁云々というだけでなくて、少なくとも十五年にわたってデフレが続いてきてそれを脱却ができなかったわけですので、やはりその難しさが高じてきたということは事実だと思いますが、逆に言うと、それだからこそ金融政策を転換して物価安定を実現しなければならなくなってきたと思う。その中で、政府と協議をして二%の物価安定目標を決定されたというふうに私は個人的に理解しております。

○尾立源幸君 それでは、改めてお伺いします。

 そういう意味で、物価目標の設定については現行の日銀法で対応できる、政府と十分協議すればいい、イギリスのような形で目標設定については政府に任せるということではないということ、それでよろしいですか。端的にお答えください。参考人って民間人ですから。

○参考人(黒田東彦君) 私は、そういうことでできたわけですから、それはそれでいいと思いますが、ただ、具体的に日銀法を変えるかどうかとか、どういうふうに変えるかといったことについては、これはあくまでも政府と国会のお決めになることですので私からは何も申し上げませんが、仮に総裁に選任されましたならば、当然、今あります現行法の下で物価安定目標の実現に向けて最大限の努力をするということに尽きると思います。

○尾立源幸君 もう一つ、同じ角度なんですけれども、アメリカの話も出ました、雇用の最大化。これは国民にとって非常に分かりやすい話だと思うんですが、その点はいかがですか。研究者として、これまでアジアの開銀の総裁として、お答えください。

○参考人(黒田東彦君) 先ほども別な委員の方にお答えしましたとおり、米国でそういうシステムになっておりまして、いわゆるデュアルマンデートと申しますか、物価の安定と雇用の極大化ということが中央銀行の責務、使命になっておりますけれども、それは現時点では米国だけでして、ほかのほとんど全ての先進国の中央銀行の使命、責務は物価の安定でございます。もちろん、金融システムの安定は全ての中央銀行のマンデートの中に入っておりますけれども。

 そうした中で、英国を含めて、物価安定目標、物価安定が中央銀行の責務、使命だとなっている中でも、やはり雇用のことも十分勘案しながらやっているわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、日本銀行法自体が物価の安定を通じて健全な国民経済の発展に資するということになっておりますので、当然、雇用のことも考慮に入れつつやっていくことだと思いますが、物価安定と並べて雇用の極大化というものを、二つ主要な目的、使命、理念として掲げるべきかどうかということについてはいろいろな議論があるところですし、現時点では米国だけなんですね。

 ですから、そこはいろいろな議論があるところだと思いますし、法律改正云々の話につきましては私から何とも申し上げかねます。

○尾立源幸君 それでは、また日銀法改正についてなんですが、衆議院の議論や、それまで候補者として、参考人として発表された論文などを見ますと、副総裁候補の中には黒田参考人と考えが異なり、異にするような方もいらっしゃいますが、こういう場合、組織の長としてマネジメントをどのようにされていますか。

○参考人(黒田東彦君) 日銀法におきまして、金融政策決定等について政策委員会で議論しますときには総裁、副総裁は独立に行動することに決まっておりまして、したがって、総裁と副総裁が違う意見を述べても構わないし、賛否が分かれても構わないわけで、これはFRBでもECBでもイングランド銀行でも、どこでも委員会で金融政策を決定するというところでは同じなんですが、ただ、総裁は日本銀行を、全体を代表し、かつそのマネジメントをするという立場にありますので、副総裁はその総裁のマネジメントを助けるという面がありますので、金融政策の決定について独立に行動するということは事実だと思いますが、あくまでも二人の副総裁とチームワークを組んで金融政策の適切な執行、運営に努めると、それから組織の適切な運営に努めるという点では変わりないと思いますし、そういう面では、当然お二人の副総裁候補の方も、任命されましたら総裁を助けるということであろうというふうに期待をしております。

○尾立源幸君 分かりました。

 それでは、二%の目標についてお話をさせていただきたいと。

 これも、もう既に質問がありましたが、今回の二%の物価上昇率というのは生鮮食料品を除くコアということで、円安が今進行しておりますのでエネルギー関係の輸入物価が高くなるということで、このエネルギーを含むと、ある意味円安の効果で二%に割と比較的上昇しやすいんじゃないかという意見もあります。そんな中で、コアコアについてもやっぱり認識しなきゃいけないねということを参考人もおっしゃっておりますが、それであるならば、コアコアについてはどのぐらいの目標であると望ましいというふうに思っていらっしゃいますでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 二%の目標、物価安定目標というものを日本銀行が決定されたときの物価というのは、御指摘のとおり、消費者物価指数総合で生鮮食料品を除くというものだと思いますが、御承知のとおり、米国ではエネルギー価格を除いた、彼らのコアコア、コアというわけですから、日本でいうとコアコアなんでしょうが、それを基準にしておりますし、ECBなどはむしろ総合指数を基準にして、コアでない全体の指数を基準にしているということで、私自身は、今の時点で消費者物価指数を、物価安定目標に掲げる消費者物価指数の中身を変換するとか、変えるという必要はないと思っておりますが。

 と申しますのは、一つは、そういうことをベースにして二%という物価安定目標を日本銀行は決定されたわけですから、その後でまた中身を変えるということになりますと、信頼性というか市場から見た信用というものにも影響が出るおそれがありますので、十分議論して中期的に指標をコアにしていくとかコアコアにしていくとか、そういう議論は十分あり得ると思いますし、また、エネルギー価格を除いたところでも、あるいは、先ほどもちょっと出ましたが、賃金なども見ていく必要はあると思いますが、今の時点で何かコアコアの指数についてのターゲットとか目標を定めるという必要はないというふうに思っております。

○尾立源幸君 分かりました。

 それから、これももうさんざん出てきている話でございますが、コストプッシュ型のインフレは良くないと、ディマンドプル型、需要先導型ということかと思いますが、果たしてそれが本当にうまくいくのかということで、先ほど櫻井委員からも資金の流れについてお話がございました。銀行から民間の企業になかなか資金が行かないんじゃないかということの指摘に対してそうかもしれないとおっしゃいましたし、一方、社債市場を通じて企業の資金調達が安易になって設備投資等々に向けられるんじゃないかと、こういうルートもあるよということだったと思うんですが、ただ、本当にそうなのかなというのをもう一つ疑問に思っております。

 今企業の内部留保というのが二百恐らく五十兆を超えている中で、本当に投資の機会があれば、それは自前のお金を私は使うんだと思っております。そういう意味で、その社債等のルートというのはちょっと私、大変クエスチョンを持っておるんですが、その辺りはどういう御認識でしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、金融機関、銀行の貸出し自体はごく足下で少し伸びているようですけれども、基本的に低迷しているということは事実でございまして、これは、特に中小企業は銀行の融資に依存していますので、中小企業の設備投資、経済活動の拡大につながっていないのではないかという懸念があることは事実でございますが、一方で、大企業は様々な手法を使って設備資金や運転資金を調達しておりまして、銀行からの借入れもありますけれども、金融資本市場、特に社債の発行とか、あるいは株式の発行、その他各種の仕組み債などもありまして、資金調達の範囲は非常にバラエティーがあるわけですね。

 ですから、その際に、金融の緩和を通じて、あるいはその期待を通じて社債市場とか株式市場が活性化するということは十分企業の設備投資の実現にプラスになっていくと思いますし、企業の今おっしゃいました設備投資意欲といいますか、成長期待というか、そういうもの自体も、金融資本市場の状況とか、あるいは政府による経済成長や物価安定のコミットメントを通じて変化してくる可能性はあるわけです。ただ、御指摘のことはそのとおりでありまして、実は日本だけでなくて、米国も欧州も企業は相当たくさんキャッシュがあるんですけれども、十分設備投資が進んでいないということは御指摘のとおりであります。

○尾立源幸君 だからこそ、この量的緩和が株や土地などの資産インフレにつながるのではないかという懸念もあるわけでございます。そうなったときに、ミニバブルが起こる、このときに本当に適切な金融政策、かじ取りができるのかなと。

 例えば、二%物価上昇はないけれども、まだ、資産バブルだけが起こっているような状況になったときに、また長期金利が上昇したときに、金融システムへの悪影響というようなものも考えられます。銀行の抱える国債等の含み損についても、これも質問等がもう既にありましたけれども、こういうときにどのように対応されるお考えでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 資産価格自体はもちろん金融政策の目標ではありませんが、資産価格の動向というのは今やほとんど全ての中央銀行が十分注視をして対応しているということも事実でございます。

 ただ、バブルの問題につきましては、現在、日本でバブルが起こっているというふうに思っている人は少ないと思いますが、いずれにせよ、一方で、政府の権限としてあります金融規制とか、あるいは金融監督、そういったものを通じて異常なバブルというものを抑制するという役割があると思いますし、他方で、中央銀行としても、異常なバブルが起こっているような状況があった場合にはそれを抑制するように働くということは、ある意味で、資産価格はターゲットではありませんけれども、そういうものも勘案しつつ、物価安定の目標に向けて金融政策を運営していくということになろうというふうに思います。

 また、もう一つ、恐縮ですが、長期金利が上がっていった場合、もちろん、物価が二%の安定目標に達するということになり、物価についての期待もそれと同じように上がっていくということになれば、名目長期金利も上がっていくと思いますが、当面は、むしろ名目長期金利はそれほど上がらない、実際、今のところ実質長期金利はどんどん下がっている、それは物価の安定に向けてプラスだと思いますが、そういう状況ですので、いわゆる出口戦略としての対応、金融システムの安定を図りつつ緩やかに出口を探っていくということは、どこの中央銀行もそう言っておりますし、実際に物価安定目標が達成された後にそういったことを十分考慮していく必要があると、金融システムの安定を損なわないようにする必要があるというふうに思っております。

○尾立源幸君 それでは、端的にお聞きしますと、二%の物価上昇の目標を立てていらっしゃると、そして、二年程度ということもある程度おっしゃっていますが、それにこだわらずに適切に、目標は臨機応変に置きながら対応していくよということでよろしいでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 物価安定目標は、達成は最大の使命だと思いますが、何度も申し上げますとおり、日本銀行法自体、物価の安定と金融システムの安定ということを日本銀行の使命としておりますので、当然、常に金融システムの安定ということは念頭に置きつつ、しかし、今の最大の課題が物価の安定、二%の物価安定目標の達成と、できるだけ早くということでございますので、それに向けて最大限の努力をしていきたいと思っております。

○尾立源幸君 財政ファイナンスの懸念についてお伺いしたいと思います。

 参考人は以前、この財政ファイナンスをしないということでございますが、一方で、日銀券ルールを含めて聖域なく改革をしていきたいとおっしゃっています。もしこれを撤廃した場合に、財政ファイナンスをしないということの担保が取れるというふうな見方もされますが、その点についてはどのようにお考えですか。

○参考人(黒田東彦君) この点は世界の中央銀行皆一致しておりまして、財政ファイナンスはしないと。まず、具体的には国債の引受けなどは一切しませんということでございます。そうした中で、それぞれの中央銀行がいろいろなルールを決めたりいろいろな形をしていることは事実でございますが、日本銀行の決めておる日銀券ルールといった形を取っている中央銀行はほとんどないと思います。

 むしろ、一番重要なことは、物価安定目標というのは、まさに二%というのは、インフレにもしない、デフレにもしないということですので、財政ファイナンスを通じて財政インフレを引き起こすというようなことは決してあってはならないわけでして、ほとんどの中央銀行は今物価安定目標を決めておりますけれども、そうした中で国債の引受けはもちろんしないと。

 しかし、国債については、長期国債の非常に、期近だけじゃなくて、期限の長いものも含めて自由にオペレーションをやっておりまして、それが財政ファイナンスになるということではないと思いますので、私は国債の引受けはしない、これはもう財政法で禁止されているわけですし、しないと。その中で、物価安定目標を達成していくわけですので、財政ファイナンスでインフレになったりするようなことはあってはならないし、絶対にしないつもりでございます。

○尾立源幸君 最後に、緩和手段として資産の買入れ、いろんなものを検討されているということでございますが、長期国債以外はマーケットの規模として本当に買入れの対象になるほどの規模があるのかということをお聞きしたいと思います。今、百六十三兆のバランスシートで百二十二兆が国債でございますが、どのぐらいの規模に拡大を考えていらっしゃるのか。

 で、国債以外にそんなにマーケットが大きいのかということと、もう一点は、もう時間がないので問題提起だけしておきますが、実は日銀の会計規則で、為替の差益が出た場合五〇%を内部留保するというふうに決められております。実は、為替差損が出たときは全額これ損で落として国庫納付金が減るようになっているんですけれども、五〇%、五〇%、どんどんとこれためているんですね。ということは、今円安で相当外債を含めた金融資産の含み益が出ているんですが、これは全部吐き出さないで、ある意味御都合主義なんですが、もうかった分は五〇%留保させてねというようなルールをつくっております。これは透明性、またガバナンスの面からどのようにお考えか、最後に所見をお述べいただきたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) 第一点のマーケットの規模についての御懸念は私も同じ意見でございまして、確かにいろいろな金融資産が日本銀行の買入れ対象になり得るわけですけれども、小さなマーケットですと、余りに日本銀行が買入れをするとマーケットの機能が十分発揮できなくなるのではないかという懸念がありますので、どうしても自然な形では長期国債、国債の買入れが中心になると思います。

 ただ、その金額とかタイミングとかそういうものについては政策委員会で決定されることでございますし、今の時点で具体的に申し上げる立場にはございませんが、国債以外のマーケットも大小様々でございますし、それから、具体的にそのリスクプレミアムが余りに大きく跳ね上がっているというふうなところは是正されていくべきですし、FRBはもう大量に資産担保証券を買い入れているわけですけれども、そういうことも含めてリスク資産についても検討はしていく必要があると思いますが、その際には、委員御指摘のようなマーケットの規模とか金融・資本市場に対する影響というものを十分考慮していく必要があると思います。

 最後の点につきましては、会計ルールのお話でございますので、仮に任命されましたら、事務方からよく話を聞いて検討させていただきたいと思います。

○尾立源幸君 ありがとうございました。

○委員長(岩城光英君) この際、お諮りいたします。

 委員外議員広野ただし君、井上哲士君及び亀井亜紀子君から本件についての質疑のため発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(岩城光英君) 御異議ないと認めます。

 それでは、まず広野君に発言を許します。広野ただし君。

○委員以外の議員(広野ただし君) 生活の党の広野ただしです。

 参考人には、非常に丁重な真摯なまた受け答えをしておられまして、ありがとうございます。私の場合、時間が十分に制限されておりますので、そこの点は簡潔にひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 二%の物価安定目標、私はデフレ脱却は大事なことだと、こう思っておりますが、その過程ですとかその結果がマネーゲームに陥るとか、場合によってはスタグフレーションになっていくというようなことも懸念されるわけであります。出口戦略とも非常に関係するわけなんですけれども、それで、三つちょっとお聞きをしたいと思います。

 まずは、実体経済がうまく付いてこない、実体経済の上昇がうまく付いてこないということになりますと、まさにマネーゲーム的な、金融緩和によって、大々的な金融緩和によってマネーゲーム的なことが現出をするということが懸念されるわけです。現在の、現状がそうだとは言っておりませんけれども、それが更に行きますとバブル的な点も出てくるし、そういう懸念もあるということが第一点です。それと併せて、スタグフレーション、賃金所得が上がらないという中で、あるいは経済が付いてこないという中でインフレだけが進行する、不況の中でのスタグフレーションというようなことがどうなるかというのがこの第一点であります。

 それと、出口戦略の方とも関係するんですが、年間二%物価上昇が二年後に例えば達成される、その後もずっとそれを継続するという共同声明だと思っております。そうしますと、任期五年間のうちに、例えば最初の二年間で二%、その後の三年間が二%ずつとこう行きますと、全体的に八%、九%上がると、こういうことになってまいります。

 所得があるいは賃金がそこに付いていくのかどうかというところが非常に問題で、そういう場合に、例えば様子を見ながら一%台に落としていく。今まで大体、当面目標が一%だったわけですけれども、そういうようなことも重要じゃないかと思うんですが、それが第二点です。

 三番目が、先ほどからもありますが、アメリカのFRBがやりますような失業率目標的なこと。私は、やっぱり日本は、四%ということであれば、三%を切る、二%台に持っていくということも、これは金融政策ばっかりでできるわけじゃありませんけれども、やっぱり日銀としてそういう方向を持っていくということが非常に大事なんじゃないかと、こう思っております。

 その三点について、簡潔によろしくお願いします。

○参考人(黒田東彦君) 実体経済にどのような影響が出るかということでございますが、もちろん金融資本市場への影響というのがまず出て、それが実体経済に波及していく、反映されていくというのが普通のルートだと思いますけれども、マネーゲームが今起こりそうな状況には必ずしもないと思いますし、十五年続きのデフレから脱却することによって実体経済にとってもプラスになりスタグフレーションというような事態は起こらないようにできると、逆に言うとそうしなければならないというふうに思います。

 二番目の出口戦略の点でございますが、これは、既に二%を達成していて、その面では問題のない、例えばFRBがデュアルマンデートに従って六・五%の失業率達成まで無制限の緩和を続けるというコミットメントをしているわけで、これはこれで米国の状況として適切だと思いますけれども、我が国の場合は依然として賃金、物価が低下しているという状況でございますので、何よりもまずその二%の物価安定目標を達成するということが大事だと思います。

 したがいまして、達成できた後も別の考慮から、例えば一%を目標に下げていくとか、そういう必要はないと思いますし、あくまでも二%というのは中期的なアンカーのようになって、そういうものをベースに国民経済が健全に発展していくということを期待しているわけでございますので、二%の物価安定目標というのは当面続けていき、達成された後も当然続けていく必要があるというふうに思っております。ただ、そのことは、それよりもどんどん高くなる、インフレを放置するということではなくて、あくまでも二%という物価安定目標に向けてインフレもデフレも排除するということだと思います。

 最後の点につきましては、雇用の問題は当然考慮しなければならないと思いますが、委員御指摘のとおり、雇用については政府の政策の果たす役割が大きいわけでございまして、中央銀行としてそういうものを十分考慮することは当然だと思いますが、中央銀行として、デュアルマンデートのあるFRBと違って、日本銀行が失業率についての目標を立てるということは、現行法の下では適切でないというふうに思っております。

○委員以外の議員(広野ただし君) その二%物価目標が経済にビルトインされていってそれが持続をされると。ところが失業率は下がらない、賃金あるいは所得が上がらないという実態がまず来ましたらば、その二%というのを見直さないんですか。

○参考人(黒田東彦君) そういう際に、仮にですけれども、そういう事態が起こったときに、物価安定目標を下げて金融を引き締めるということは、決して経済にとってプラスにならないと思います、賃金や雇用の確保といった面でもですね。

 ですから、あくまでもインフレでもないデフレでもない物価の安定が中央銀行の使命であって、それを中期的に実現していくと。それが中期的なアンカーになってくれば、それが国民経済の健全な発展に資すると。具体的な失業率の目標とか見通しとかそういうものは、少なくともほとんどの中央銀行はそういうものを目標、目的にはしておらないということだと思います。

○委員以外の議員(広野ただし君) その点がちょっと懸念をされるわけですね。失業率とかあるいは賃金、所得のターゲティングが定まらない中で、それは重要視はするとはいうものの、二%の物価目標はぐっとやっていくということが、国民所得、国民全体、私たちは国民生活が第一だと、人を大切にする政治をするんだと、こういう中で、それも非常にちょっと懸念をされると思っております。

 最後に、中小企業金融であります。

 日本の経済、九九%は中小企業であります。その中で、具体的に先ほど支店の話とかおっしゃっていましたが、第二地銀ですとか信金、信組ですね、そういう中小企業担当金融機関との関係ですね。特に、グローバルスタンダードの大手銀行は、それは資本比率が八パー、一〇パーとかというのはいいですが、地銀以下は国内ですから四%というダブルスタンダードに言わばなっているわけですが、更にそれをしっかりと、地域経済あるいは中小企業をしっかりするために、もっとそれにこだわらずやっていくという考え方はありませんか。

○参考人(黒田東彦君) 金融規制の問題につきましては、基本的に政府の責任でございますが、御指摘の規制、いわゆるバーゼル3に沿って行われていまして、欧州は基本的に全てバーゼル3を守るということになっておりますが、米国はまだ合意していないわけですね。ただ、その中でも米国の場合は、大手銀行は全てもうバーゼル3の最終目標にほとんど達しようとしているぐらいで、経過措置も必要ないぐらいもうどんどん進めているわけですが、数千ある米国の中小銀行は、そもそもバーゼル3の下にないわけですね。

 ですから、そういうことも踏まえて恐らく政府は、大手銀行とそれ以外の、つまり国際的な取引をする大手銀行は共通のルールで行い、中小金融機関で国内で営業している者についてはそれとは少し違ったルールでやるということをやっておられるんだと思いますが、それ自体は私は適切なことだと思いますけれども、中央銀行としては、やはり何としても金融システムの安定ということが重要でありまして、その中でどのようにして中小企業金融を助けていくかと。

 中小企業金融の場合、どうしても銀行依存ですので、御指摘のような中小金融機関が融資をしやすい環境をどのようにつくっていくかということについては中央銀行としても努める必要がありますし、十分政府とも協議をしていく必要があると思っております。

○委員以外の議員(広野ただし君) どうも、時間が来ましたので、ありがとうございました。

○委員長(岩城光英君) 次に、井上君に発言を許します。井上哲士君。

○委員以外の議員(井上哲士君) 日本共産党の井上哲士です。

 重要な人事に関する質疑におきまして委員外発言の機会をいただいたことに、まず御礼を申し上げます。

 金融緩和と雇用、賃金の関係についてお聞きいたします。

 日銀自身が行った生活意識に関するアンケート調査によりますと、八割の国民が物価上昇に否定的な意見を述べております。雇用や賃金の改善なしに物価だけ上がるのではないかという不安が示されているわけですが、日銀が大胆な金融緩和を進めますと、雇用、賃金はどうなっていくのか、賃金が実際上がっていくのか、まずお聞きいたします。

○参考人(黒田東彦君) 過去十五年間のデフレの状況を見ますと、物価も下がり、賃金も下がり、雇用も本格的に改善しなかったということでございまして、そういったことも踏まえて、二%の物価安定目標を決め、これをできるだけ早期に実現するということを日本銀行としてコミットしたわけでございまして、当然二%の物価安定目標を達成する中で賃金や雇用も改善していくというふうに思います。

 ただ、時期的なずれとかそういうものがあり得ますので、そこは政府が十分財政政策その他で対応する必要があると思いますし、既にいろいろな対応をしておられるというふうに理解しております。

○委員以外の議員(井上哲士君) 物価は上がるけれども賃金が改善をしないという、そういう時期的なずれがあるであろうと、こういうお話でありました。

 これは国民生活にとっては非常に大きな打撃になるわけで、しかもそれに政府は消費税の増税ということもかぶせようとしているわけですから、国民生活にとっては非常に大きな打撃が連続をするということになってまいります。

 そういうずれについて、衆議院の議論では、雇用、賃金と物価の上昇率が平仄が合った形でという言い方をされておりました。ただ、平仄が合った形などと言わずに、むしろ先に賃金を上げるということが必要ではないかと思っておるんですね。賃上げをして消費拡大をし、物価が上がっていくということがやはり国民が一番望む姿だと思います。

 先ほどもありましたように、大企業は今多くの内部留保を持っておりますから、その一部を活用して自社の賃金を上げていくということは十分に可能なわけでありまして、まず賃上げを進めるということが可能でもあるし必要ではないかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 確かに政府は、そういったことも考慮し、経済界に働きかけて賃金を上げるように慫慂しているというふうに思います。

 ただ、賃金と物価の関係は、それぞれの国あるいは景気循環の過程でいろいろな動きをするということは事実でございますので、十分注視していく、中央銀行としてよく見ていくという必要はありますけれども、あくまでも中央銀行の使命、役割というのは物価の安定でございまして、物価の安定を通じて、当然賃金や雇用も含めて国民経済全体の健全な発展に資するようにするということは間違いないと思いますけれども、もう中央銀行としてはあくまでも物価の安定ということが最大の使命であると。当面、日本銀行の決めた二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということが最大の使命であるというふうに認識しております。

○委員以外の議員(井上哲士君) 衆議院での議論の際に、賃金を上げるのは政府だけでなく日銀の課題でもあると、こういうふうに言われております。かつ、賃金を上げるために政府と緊密に連携する、それから連絡を取るとも述べられておりますし、先ほどは配慮が必要だと、こういうふうに言われておりました。

 そうしますと、日銀としては何をするのかと。政府と連携をする、例えば政府にそういう賃上げの施策を求めていくのかと。いろいろあると思うんですけれども、日銀としてはそのために何をされるんでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 先ほどから申し上げておりますように、日本銀行としては、物価の安定が最大の使命であり、それを通じて国民経済の健全な発展に資するということを期待しておるわけでございます。

 したがいまして、当然のことながら、消費者物価指数だけでなく経済活動の様々な指標、そして、賃金や失業の状況というものも当然十分見ていき、配慮し、必要に応じて政府と十分な意見の疎通を図って対応策を考えていかなければならないと思いますが、何度も申し上げていますように、中央銀行の使命というのは物価の安定でございまして、雇用の確保といったようなことは、現行日銀法では日本銀行の使命ではなくて、むしろ政府の役割であるというふうに認識しております。

○委員以外の議員(井上哲士君) 日本銀行法は確かに使命となっておりますが、衆議院の答弁では日銀の課題であると、こう言われたわけですね。つまり、課題としてどのように進めていくのかということで重ねてお聞きしますが、どうでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 当然、国民経済の健全な発展というのは賃金や雇用が改善していくということを含んでいるわけでございまして、物価は安定しているけれども賃金が下がっていくとか雇用が減っていくというようなことでは国民経済の健全な発展とは言えないと思いますので、物価の安定を図るというのが最大の課題であり、使命であり、目標であると思いますけれども、その際に、経済の実態、特に賃金や雇用の状況を十分勘案し、配慮し、金融政策の運営に努めていくと。それから、特に政府との協調、協力、政府の経済政策全体との整合性というものも十分勘案していきますので、必要に応じていろいろな機会に政府に対して注文を出すということもあろうかと思います。

 ただ、何度も申し上げますが、中央銀行の使命というのは、どこの国でも基本的に物価の安定と金融システムの安定と。それをまず果たさなければ、中央銀行としての使命を果たしたことにならないというふうに思っております。

○委員以外の議員(井上哲士君) やはり、物価だけが上がってなかなか賃上げがされないんじゃないかという非常に疑問が払拭ができません。

 もう一点、金融緩和の弊害について、FRBとかECBなどの世界的な金融緩和とも相まって、投機マネーとして世界経済を攪乱をしているという問題があります。この点、総裁候補は、衆議院の議論のときには、日本の資金が外に流れて海外のバブルをあおったということはないと述べられました。しかし、例えば円キャリートレードということが言われましたけれども、日本のこの金利の低い資金が投機の資金として通貨や株式、債券、食料、エネルギーなどの商品などに流れ込んだという事実はあったわけですね。

 先ほどのような理屈でいいますと、日銀は幾ら金融緩和しても、海外に流れて投機マネー化するリスクの管理は必要ないということにもなっていくかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。

○参考人(黒田東彦君) 私が申し上げていますのは、金融緩和をしたときに、他の事情にして等しければ為替に影響、為替を下落させる傾向があるということは事実でございまして、そのことは、裏返して言えば、資金が外に出ていく傾向があるということは事実でございます。

 ただ、今回のリーマン・ショック後の欧米の金融危機を見ましても、相互に様々な、仕組み債とかモーゲージ担保証券とかその他様々な、デリバティブも含めてですね、投資をして大損をしたというのは欧米の金融機関でありまして、日本の金融機関が大幅な、一部の金融機関はもちろん損をしたところもありますけれども、欧米の金融機関のように破綻したとか、破綻に近いような状況になったというところはないわけでございまして、その意味では、確かに資金が流出する傾向はあったかもしれませんが、それが世界の、特に欧米のいろいろなマネーゲームを物すごくあおり、そうしたとしたら恐らく損をしていたと思うんですけれども、そういう損をしたということは見られませんので、資金が流出する傾向はあったとは思いますけれども、日本の金融緩和が欧米のああいう金融危機を、その前の金融のバブルがあって、それが崩壊して金融危機を招いた原因になったと、主たる要因だったとは思えないと思いますが、確かに他の事情にして等しければ金融緩和した場合に資金が流出する傾向というのはありますので、その影響というものも十分考慮していく必要はあると思います。

○委員以外の議員(井上哲士君) ありがとうございました。

○委員長(岩城光英君) 次に、亀井君に発言を許します。亀井亜紀子さん。

○委員以外の議員(亀井亜紀子君) みどりの風の亀井亜紀子でございます。

 本日は、重要な人事に関し、みどりの風にも発言の機会をいただきましてありがとうございます。お礼を申し上げます。

 今回の日銀の人事に関してですけれども、日銀の独立性という観点から見ますと、政府のやり方に私は問題があったと思います。日銀法の改正もちらつかせながら協力を求めたという、そういう局面にあって、その改正には至らないように共同声明で落ち着いたというのは、ある意味妥協点である、妥当なところだろうと思っております。

 それで、今までも皆様の質問にありましたけれども、どこまで政府と歩調を合わせて、仮に賃金が上がっていかないにしても、雇用に悪影響が及んだとしても、その共同声明にあるとおり二%のインフレターゲットを強力に推し進めていくのかという、そこが一番の懸念であろうと思います。

 先ほどから、FRBのみは物価の安定と雇用の安定を求められているけれども、その他の中央銀行は物価の安定だけが責務であると。ですので、その物価の安定というのは、この共同声明の後、イコールインフレ二%ということであって、短期的にというか大体二年くらいで目標を達成したいということを前おっしゃっていたので、その二年くらいのスパンで二%をまず実現していくと、そのような御見解であると理解してよろしいですか。

○参考人(黒田東彦君) 日本銀行が政策委員会で決定した事項、その前に共同声明でコミットした事項というのは、二%の物価安定目標を設定し、それをできるだけ早期に実現するということでありまして、各国の中央銀行の例を見ますと、大体その目標に近づける期間というのは二年程度を目途にしているところが多いようでございますので、やはりいつまでも実現できないということでは物価安定目標を設定した意味がありませんので、二%、この実現のタイムスパンとしては二年程度というのは適当だと思いますけれども、何よりもコミットしてやらなければならないのは二%の物価安定目標の実現、早期の実現、できるだけ早期の実現であるというふうに思っております。

 なお、そういう過程で基本的に賃金や物価も改善していくと思います。というのは、この十五年のデフレの中で賃金も物価も良くなかったわけでして、それを克服するために二%の物価安定目標を決め、それをできるだけ早期に実現するということにしたわけですので、当然、中期的に賃金や雇用も改善していくというふうに思っております。

○委員以外の議員(亀井亜紀子君) では、共同声明にある文言というのはあくまでも「できるだけ早期に」ですから、よるところはできるだけ早期にということであって、その一つの目安として欧米諸国では大体二年ぐらいをスパンとしていますと、そういうふうに私は理解いたします。

 それで、二〇一二年の二月の十四日に日銀は、事実上インフレを目標とした、そういう宣言をしたと思うんですね。このときは中長期的な物価安定のめどというのを発表しまして、消費者物価指数、前年比上昇率で二%以下のプラスの領域、当面一%をめどとするという表現をしています。これは、つまり、この時点で二%程度のインフレが望ましいとしながらも、なかなかその達成は難しいので当面一%をめどとするということで、その一%の方を強く出したというだけだろうと思います。

 安倍総理の二%のインフレターゲットというのはこのときの二%に含まれていると思うので、今のメッセージの出し方というのはあくまでも、二%、二%と言われていますけれども、できるだけ早期にということで、当面一%とは対外的に言わないにしても、そういう方向はあり得るのかしらと思っているのですが、お伺いをいたします。

 そして、加えて、欧米の場合は、小さいものを大きく見せる、一のものを十に見せる能力がたけているんだと思います。つまり、例えば無制限緩和といっても無条件緩和ではない。なので、その無制限緩和であっても、その制限の有無は金融政策の規模と直接的な関係はない、ただ、無制限緩和ですよと言うことによって大きく見せている、それによって市場が反応するということですから、この技術において日銀は伝統的に弱いのかしらと思っているんですが、これを踏まえて、どのようにそのメッセージを出されますか、よろしくお願いします。

○参考人(黒田東彦君) 二%以下、当面は一%をめどにするということ自体は、それ以前に、それ以前はプラスということを言っていただけなわけですから、それに比べると前進だったと思いますけれども、やはり二%の物価安定目標を設定して、それをできるだけ早期に実現すると。英語でインフレーションターゲットと、あるいはプライス・スタビリティー・ターゲットという、ターゲットという言葉をはっきりと日本銀行自体が今回使ったわけでして、そこには明らかに前の弱いコミットメントに比べるとはっきりしたコミットメントがあったというふうに思っておりますので、私自身も二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということに尽きると思いますし、できるだけ早くというのがどのくらいかと言われると、諸外国の例を見れば二年ぐらいをめどにしているので、それが一つのめどになるでしょうということを申し上げているわけでございます。

 それから、もう一つの市場の期待とかそれからプレゼンテーションという点ですが、これは期待に働きかけることが重要なことは事実なんですが、それは、期待というのは実現しないと失望に変わり、マーケットは逆に反応するわけですね。ですから、期待に働きかけるということは重要であり、私もそういう点を所信で申し上げましたけれども、それは早くその影響が出てくるという意味では重要なんですけれども、そのことはそれに即してきちっとしたことを実施すると、実行するということとペアになっているわけでして、欧米の場合もそこは言ったことはやはりちゃんと実行しているわけですね。

 だから、そこは私は、何か小さなものを大きく見せているということではなくて、適切に市場とコミュニケートして、それに沿ってきちっと実行していると、その結果、また新しい政策を市場に発表すると効果がすぐに出てくると、そういういい循環になっていると思いますので、日本銀行としてもそういういい循環になるような努力が必要であろうというふうに思っております。

○委員以外の議員(亀井亜紀子君) 私が申し上げたかったのは、日銀の独立性という観点から、二%と言っておいて、でも文言はできるだけ早期になわけですから、市場の動向を見ながら調整していくということはやっていいんじゃないでしょうかという意味で申し上げました。

 時間ですかね。

○委員長(岩城光英君) 十五分です。

○委員以外の議員(亀井亜紀子君) はい。最後、一つだけ、資金調達のやり方なんですけれども、日銀が為替介入をするときに、一九九九年の九月まではその市中、日銀資金を使っていましたけれども、今入札方式で市中銀行に買わせる形を取っていますが、これをやると、その市中銀行の資金が外貨に積み上がって凍り付いてしまうので、本来日銀がやはり資金を使う、それによって金融緩和をしたらいいんじゃないかと思っているんですけれども、どのようにお考えですか。

○参考人(黒田東彦君) この点は、いわゆる為替介入について不胎化するかどうかということと関連しているわけですね。

 おっしゃるように、前は、政府が介入するときには外為証券を発行するんですが、それは短期のものであるし特定の目的であるということで、日銀が引き受けて、その資金で政府が介入するということをやっていたんですが、ルールが変わりまして、今政府が介入するときは、外為証券を市場に発行して、それで得た円で介入する、こういう形になっているわけです。それはおっしゃるとおりで、ですから、それだけ見ますと、かつては介入は不胎化されていなかったと、非不胎化介入、ですから、純粋の介入と言わば金融とがリンクしていたわけですが、今はそうでなくて、介入は純粋の介入で、資金は、円の流動性は変化しないという形になっているわけですね。

 ただ、これはそこだけ取るとそうなんですが、それではかつて日銀が外為証券を引き受けたときに不胎化していなかったかどうかというのは、そのときにそれに合わせて流動性を調整すればやはり不胎化しちゃうわけですね。逆に言うと、今のシステムでも、日銀が、政府が外貨介入をしたときにそれと合わせてその分、相当するだけ金融を緩和すれば、流動性を供給すれば、これは不胎化介入ではない、いわゆる非不胎化介入になるわけでして、御指摘のシステムの変化はそのとおりなんですけれども、それが、その介入が不胎化されていたかされていなかったかということとは必ずしもリンクしていないので、介入が政府によって行われたときに日銀としてどのような流動性供給で対応するかしないかということは、それ自体として検討されるべきことであると思いますし、そのシステムが変化したのが良かったかどうかという議論もあるとは思いますけれども、現行の制度の下ではそういうふうになっておって、それを踏まえて日銀としてどのように対応するかということだと思います。

○委員以外の議員(亀井亜紀子君) 終わります。

 ありがとうございました。

○委員長(岩城光英君) これにて候補者に対する質疑を終了いたします。

 黒田参考人に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多忙の中を御意見をお述べいただき誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。

 本日はこれにて散会いたします。

   午後零時十八分散会

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