特定秘密の保護に関する法律案(秘密保護法)
本日11月7日午後審議入りした秘密保護法とは、諸外国との情報共有を進めるため、1)防衛、2)外交、3)安全脅威活動防止、4)テロ活動防止の4分野で機密性の高い情報を「特定秘密」に指定し、これらの情報を漏えいした公務員や、公務員をあざむいたり脅迫したりする不正アクセス行為にて特定秘密を取得した第三者などに、最高10年以下の懲役を科すものである。
Ⅰ、「諸外国における国家秘密の指定と解除」 国立国会図書館
Ⅱ、Peace Philosophy Centre
Peace
Philosophy Centre, based in Vancouver, Canada (est. 2007), provides a space
for dialogue and facilitates learning for creating a peaceful and sustainable
world.
ピース・フィロソフィー・センター(カナダ・バンクーバー 2007年設立)は平和で持続可能な世界を創るための対話と学びの場を提供します。
Monday, September 23, 2013
『国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)』の要約 GLOBAL PRINCIPLES ON
NATIONAL SECURITY AND THE RIGHT TO INFORMATION ("Tshwane Principles")
日本では「秘密保護法」がこの秋国会で審議される予定のようですが、この法案の危険性をローレンス・レペタ明治大学教授が説く記事(『週刊金曜日』9月27日号掲載)の中で触れる『国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)』の15の要約点を和訳付きで紹介します(和訳は Peace Philosophy Centre が独自に行ったもので公式なものではありません。また、翻訳はより正確を期すために修正することがあります。)。
この原則は70カ国以上にわたる国の500人以上の専門家の助言を得て、Open Society Justice Initiative の企画により世界中で開催された14回において、22の団体や学術機関により起草され、今年6月12日に発表されたものです。このプロセスが南アフリカの首都、ツワネで開かれた会合で完結したことから、「ツワネ原則」と呼ばれるようになっています。(Open Society Foundation より)
元の文書は Open Society Foundation のウェブサイトにあるものです。リンクは以下です。http://www.opensocietyfoundations.org/fact-sheets/tshwane-principles-national-security-and-right-information-overview-15-points
以下、和訳です。
The
Tshwane Principles on National Security and the Right to Information address
the question of how to ensure public access to government information without
jeopardizing legitimate efforts to protect people from national security
threats.
『国家安全保障と情報への権利に関するツワネ原則』は国家安全保障への脅威から人々を守るための合法的な努力を危険にさらすことはなしにどうやって政府の情報への公的アクセスを保証するかの問題を扱います。
These
Principles are based on international and national law and practices. They were
developed in order to provide guidance to those engaged in drafting, revising,
or implementing relevant laws or policies.
これらの原則は国際法、国内法とその運用に基づくものです。この分野に関連する法律や政策の起草、改正、施行に関わる人々に指針を提供するために作られました。
Based on
more than two years of consultation around the world with government actors,
the security sector and civil society, they set out in unprecedented detail
guidelines on the appropriate limits of secrecy, the role of whistleblowers,
and other issues.
これらの原則は二年間にわたる政府関係者、安全保障分野、市民社会から助言を得た末、秘密保持の適正な限度、内部告発者の役割や、他の関連事項について今までに例のないほど詳細にわたるガイドラインを立案したものです。
Here is a 15-point overview:
以下が15の要約点です。
The
public has a right of access to government information, including information
from private entities that perform public functions or receive public funds. (Principle 1)
公衆は政府の情報にアクセスする権利を有する。それは、公的な機能を果たす、或いは公的な資金を受け取る私的機関も含まれる。(原則1)
It is up
to the government to prove the necessity of restrictions on the right to
information. (Principle 4)
知る権利への制限の必要性を証明するのは政府の責務である。(原則4)
Governments
may legitimately withhold information in narrowly defined areas, such as
defence plans, weapons development, and the operations and sources used by
intelligence services. Also, they may withhold confidential information
supplied by foreign governments that is linked to national security matters. (Principle 9)
政府は防衛計画、兵器開発、諜報機関によって使われる情報源など狭義の分野で合法的に情報を制限することができる。また、国家安全保障に関連する事柄について外国政府から提供された機密情報も制限することができる。(原則9)
But
governments should never withhold information concerning violations of
international human rights and humanitarian law, including information about
the circumstances and perpetrators of torture and crimes against humanity, and
the location of secret prisons. This includes information about past abuses
under previous regimes, and any information they hold regarding violations
committed by their own agents or by others. (Principle 10A)
しかし、政府は人権、人道に関する国際法の違反についての情報は決して制限してはいけない。これは、現政権より前の政権下における違反行為についての情報、また、自らの関係者あるいは他者により行われた違反行為について政府が所持する情報についても当てはまる。(原則10A)
The
public has a right to know about systems of surveillance, and the procedures
for authorizing them. (Principle 10E)
公衆は監視システム、そしてそれらを認可する手続きについて知る権利がある。(原則10E)
No
government entity may be exempt from disclosure requirements—including
security sector and intelligence authorities. The public also has a right to
know about the existence of all security sector entities, the laws and
regulations that govern them, and their budgets. (Principles 5 and 10C)
安全保障セクターや諜報機関を含め、いかなる政府機関も情報公開の必要性から免除されることはない。公衆はまた、安全保障セクターの機関の存在について知る権利を有し、それらの機関を統治するための法律や規則、そしてそれらの機関の予算についての情報も知る権利を有する。(原則5と10C)
Whistleblowers in the public sector should not face retaliation if the public interest in the information disclosed outweighs the public interest in secrecy. But they should have first made a reasonable effort to address the issue through official complaint mechanisms, provided that an effective mechanism exists. (Principles 40, 41, and 43)公共セクターにおける内部告発者は、公開された情報による公益が秘密保持における公益を上回る場合、報復措置を受けるべきではない。(原則40,41、と43)
Criminal action against those who leak information should be considered only if the information poses a “real and identifiable risk of causing significant harm” that overrides the public interest in disclosure. (Principles 43 and 46)情報を流出させる人を刑事裁判に持ち込むことは、その情報が公開されることによって生じる公益を上回るような「実在して確認可能な重大損害を引き起こすリスク」をもたらすときのみ検討されるべきである。(原則43と46)
Journalists
and others who do not work for the government should not be prosecuted for
receiving, possessing or disclosing classified information to the public, or
for conspiracy or other crimes based on their seeking or accessing classified
information. (Principle 47)
ジャーナリストその他、政府に勤めていない人々は、機密情報を受け取ること、所有すること、公衆に公開することに対し、また機密情報を求めたり機密情報にアクセスすることに対して共謀その他の犯罪で訴追されるべきではない。(原則47)
Journalists
and others who do not work for the government should not be forced to reveal a
confidential source or other unpublished information in a leak investigation. (Principle 48)
ジャーナリストその他、政府に勤めていない人々は、情報流出の調査において、秘密情報源や他の非公開情報を明かすことを強制されるべきではない。(原則48)
Public
access to judicial processes is essential: “invocation
of national security may not be relied upon to undermine the fundamental right
of the public to access judicial processes.”
Media and the public should be permitted to challenge any limitation on public
access to judicial processes. (Principle 28)
裁判手続き情報が一般公開可能であることは不可欠である:「裁判手続き情報に対する公衆の根本的な権利を弱めるために国家安全保障の発動に頼ることはならない」。(原則28)
Governments
should not be permitted to keep state secrets or other information confidential
that prevents victims of human rights violations from seeking or obtaining a
remedy for their violation. (Principle 30)
人権侵害の被害者がその侵害行為への対応策を求めたり得たりすることを阻害するような国家機密や他の情報を、政府が秘密のままにすることは許されない。(原則30)
There
should be independent oversight bodies for the security sector, and the bodies
should be able to access all information needed for effective oversight. (Principles 6, 31–33)
安全保障セクターには独立した監視機関を設けるべきであり、それらの機関は効果的な監視のために必要な全ての情報にアクセス可能であるべきである。(原則6、31-33)
Information
should be classified only as long as necessary, and never indefinitely. Laws
should govern the maximum permissible period of classification. (Principle 16)
情報が機密化される機関は必要な期間に限るべきであり、無期限であってはいけない。情報機密化が許される最長期間は法律で定めるべきである。(原則16)
There
should be clear procedures for requesting declassification, with priority
procedures for the declassification of information of public interest. (Principle 17)
機密解除を要請する明確な手続きがなければいけない。その際、公益に与する情報を優先的に解除する手続きも定めるべきである。
以上、原典は
The
Tshwane Principles on National Security and the Right to Information: An
Overview in 15 Points
投稿者
Peace Philosopher 時刻: 1:36 pm
「上記のPDF」はこちらから
Ⅲ、特定秘密保護法は、政府の下半身を隠すものだ(ローレンス・レペタ)2013 年 10 月 18 日
6:56 PM |
米国は、国家安全保障局(NSA)による全世界の盗聴網を暴露したスノーデン氏を起訴し、ウィキリークスに情報を提供したマニング上等兵に懲役35年の刑をくだした。こんな米国の悪行を、日本は真似しようというのか。
マニング、スノーデン両事件に見る「国家秘密」のウソ
国会は近く「秘密保護法」の審議に入るが、安倍内閣によって提出され、パブリックコメントにかけられたこの法案は、厳しく批判されている。この法案の多くの欠点が、日本弁護士会や他の団体によって指摘されているのだ。
欠点とされているのは、秘密とされる情報の定義が極端に広い、公文書を公開させる権限を持つ独立した監視機関について触れていない、社会にとって重要な問題を報じたジャーナリストなどの人々が、犯罪として告発される可能性があること、そして何よりも、安全保障の問題について知る権利の重要性がまったく認識されていないことである。
民主的な社会なら、およそ人々から情報を隠す権限を政府に与えるような法や規制というものは、慎重に検討されねばならない。政府が情報を秘密にすることの必要性を主張するなら、人々の知る権利とそれがどのように関わることになるかが、同時に考慮されねばならないのである。
政府が情報を秘密にすることと、国民の知る権利とのバランスを維持することの難しさ、そしてそのバランスが崩れた際に生じる極めて深刻な問題については、米国で大々的に報じられたマニング、スノーデン両事件に示されていよう。この両事件が示す最も顕著な問題とは、政府が情報を過剰に機密扱いにすることで極端な秘密主義が生じ、さらにこうした情報を扱う権限を与えた巨大な官僚組織を統率することが困難となるということだ。
多くの専門家は、外部の敵から米国をより安全にするためと称されている国家機密のシステムが、現実には米国をより脆弱にしていると考えている。国家安全保障の専門家である政治学者のモートン・ハルペリン氏は、「あらゆる研究の結論は、こうした問題を解決するためにまずやらねばならないのは、秘密指定情報の量を劇的に少なくすることだ」としている。
米スパイ法の非合理さ
米国では毎年、おびただしい量の政府文書が秘密指定されている。国家情報局長官(D.N.I.)の報告書によれば、四〇〇万人以上の人間が秘密指定された情報を見ることができる極秘情報取り扱い資格を保有している。そのうち実に一四〇万人もが、マニング、スノーデン両氏がそうだったように「トップシークレット」に接する資格がある。これほど多数の人々を巻き込んだ巨大なシステムが、国家機密を管理する効果を持ちうるとは到底考えられまい。
こうした膨大な情報の機密を保持するという途方もない課題に直面して、米国政府がとった政策は、犯人として捕らえうる限りの機密漏洩者に対し、極端に厳しい罰則を求刑するということだった。マニング二等兵の訴追にあたって政府側が求刑したのは、懲役六〇年である。八月に下された判決では、懲役三五年が宣告された。
マニング氏は、外国に雇われたスパイではない。彼が明るみにした情報は、外国の諜報機関に渡されたわけではなかった。それは、米国そして世界中で読むことのできる新聞に掲載されたのである。こうした場合の罰則は、たいていの国では米国よりはるかに軽い。
米国で「スパイ」が法の裁きを受けるようになったのは、一九一七年スパイ法に端を発している。これは米国が第一次世界大戦に参戦した直後に導入された法規で、政府の権力というものについての理解が、今日のそれと非常に異なっていた時代のものである。「知る権利」という用語は一九五〇年代までに登場したことはなく、情報公開法の成立は一九六七年まで待たねばならなかった。
この一九一七年スパイ法は、曖昧で定義が広すぎると批判されたように内容が不十分なまま起草され、この法律を執行せねばならない裁判官たちすらも、そのように批判したほどだ。だが、依然有効で、秘密をもらしたと告発されたすべての人々を罰するための恐るべき権限を米国政府に与えている。のみならず、政府は有罪判決を引き出す上で、情報を暴露した結果いったいどのような害悪が生じたのかについては、何も証明しなくともいい。
「ツワネ原則」こそモデルだ
マニングとスノーデン両氏のような個人に対する政府当局の告発は大きく報道され、特定の個人を厳しく罰したものの、国家の安全保障に関する情報の保護はどうあるべきかという重要な問題を何も解決してはいない。そしてこのような米国の例は、日本が従うべきモデルでは決してありない。別のモデルがあるのだ。
今年になって慎重に検討すべき新しいモデルが登場した。今年六月に南アフリカのツワネ市で開かれた会議で採択され、発表された「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(『ツワネ原則』、”Tshwane Principles”)である。この原則は、国家安全保障分野での情報保持、あるいはそうした情報の暴露に対する処罰の権限について、関連の法・規則の起草や修正、執行にあたっての詳しいガイドラインを示している。日本政府が新秘密保護法を採択しようと考えているまさにその時に、こうした国家安全保障の分野の情報に関する新たな権威ある勧告が登場したのは、まさにタイムリーではないか。
「ツワネ原則」の策定作業は二年以上にわたり、世界中から参加した数百人の現職あるいは退職した政府の官僚や軍の将校を含む専門家たちが加わった。それは、知る権利や、政府が合法的に秘密にしておきたい国家安全保障の情報の範囲、ジャーナリストや独立した監視団体の保護といった論点のみならず、秘密保護法案に関して、日本の国会議員や有権者が考えねばならないような他の論点も提起している(注1)。
すべての人々にとって最も重大な問題は、情報を過度に秘密にすることにより、政府に不当な行為を許す完璧な条件を与えてしまうことである。マニング二等兵がウィキリークスに提供したデータは、米国の全世界における軍事・外交活動のベールを暴いた。そうしたデータには、二人のジャーナリストを含めた市民たちが殺害された、二〇〇七年にバグダッドで起きた米軍ヘリコプターによる攻撃のビデオ映像が含まれる。彼はウィキリークスに、二五万件の外交電報や、キューバのグアンタナモ強制収容所に裁判なしで投獄されている拘束者の資料、イラクとアフガニスタンでの戦争で起きた何十万という事故の報告書も提供した。
政府の不当行為阻止のために
エドワード・スノーデン氏がこの五月にリークした情報に基づき、英『ガーディアン』紙は巨大電子スパイ機関である米国家安全保障局(NSA)が行なっている秘密監視プログラムを暴露する一連のスクープ記事を掲載した。スノーデン氏の暴露によって、私たちはプリズムやXキースコア、テンポラ・インターネット監視プログラムの存在を知った。さらにNSAが、米国市民のメタデータ(注2)を収集したり日本等米国の「同盟諸国」を含む全世界の政治的指導者の会話を傍受するため、そうしたシステムや電話会社やインターネットのプロバイダーとの間で結んだ秘密協定を利用していた事実も、私たちは知ったのだ。
日本の読者は、自国民がアフガニスタンやイラク、そして世界のどこかの戦争に巻き込まれず、自分の国にNSAに匹敵するようなスパイ機関がないことに安堵するかもしれない。しかし、これから将来、どうなるかについては誰もわからないのだ。
日本の国民が、国家の安全保障に関する秘密を保護するためのしかるべき制度を企図するとなれば、米国と同じ権力の乱用という危険性が必然的に持ち上がってくるだろう。
マニング、スノーデン両氏や他の情報提供者、内部告発者の行動がなければ、私たちは米国政府による数々の不当行為を決して知ることはなかった。政府の情報を公開することによって守られているのは、人々の知る権利以上のものである。政府の不当な行為を止めさせるのにも役立つのだ。自分たちの行為が公的な調査の対象になるとなれば、政府の官僚らは、悪事を控えるだろうから。
日本の国民が秘密保護法案について思いをめぐらすのであれば、民主的な政府にとって情報を過度に秘密にしておくことがいかに危険であるかを、注意深く考えるべきである。(訳/成澤宗男・編集部、取材協力/乗松聡子、9月27日号)
(注1)「ツワネ原則」では国家の秘密情報を「国防」など限定した範囲で認めるが、人権侵害や違法行為を秘密とするのを許さない。また暴露された情報の価値が秘密にするより公開した方が社会的に有益と判断されたら、暴露した者は罰せられない。日本語の要約は、URL
http://peacephilosophy.blogspot.jp/ に掲載。
(注2)データそのものではなく、そのデータに関連する作成日時や作成者、データ形式、タイトルなどについての情報。
Lawrence Repeta.1951年、米国生まれ。弁護士。テンプル大学副学長等を経て、現在明治大学特任教授。日本の裁判の法廷で傍聴人がメモを採ることの許可を求めたが認められなかったため、1983年に国家賠償請求訴訟を起こす。最高裁で敗訴したが、その後実質的にメモは解禁に。今年2月には、外国特派員協会で講演し、自民党の改憲草案を批判した。
この投稿は 2013 年 10 月 18 日 金曜日 6:56 PM に 国際, 政治 カテゴリーに公開されました。
「上記全文PDF」はこちらから
Ⅳ、秘密保護法を考える超党派の議員と市民による省庁交渉(第3回勉強会)議事録(20131029版)
Ⅴ、「briefing_understanding_the Global Principles on National Security and the Right to Information」
国家安全保障と情報の右側にあるグロバール原則を理解する(発表資料)
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